433 恋敵との対面

榊詩門は礼儀正しく橘泉の手を握り、笑顔で言った。「本当に久しぶりですね。でも、私が海外にいた時もよくあなたの映画を見ていました。演技を見るたびに感動せずにはいられませんでした」

橘泉は目を輝かせたが、謙虚に答えた。「過分なお言葉です」

チャリティーパーティーは全員が揃うまで始まらないため、藤丸詩織たち三人は会話を交わしていた。

そのとき、外から声が聞こえ、続いてカメラマンたちが「桜井グループの桜井蓮が来ました!皆さん、撮影の準備を!」と叫んでいた。

フラッシュが再び瞬いた。

橘泉はそれを見て笑いながら言った。「詩織と詩門が来た時も、カメラマンたちはこんな感じで撮影していましたね。本当に凄まじいですよ」

藤丸詩織は先ほどまで前を向いて歩くことに集中していて、フラッシュの数に気付いていなかったが、今横から見てみると、橘泉の言葉に頷いて同意した。「確かにすごいですね」

黒いスーツを着た桜井蓮が大勢の人々に囲まれながらレッドカーペットを歩いていると、多くの女性ゲストたちが彼に視線を向け、うっとりと「かっこいい」と言った。

しかし次の瞬間、女性ゲストたちは不思議そうに言い始めた。「桜井社長の隣にはいつも女性がいないはずなのに、今回はどうして?もしかして恋愛でも始めたの?」

この疑問が出た途端、人々は桜井蓮が一人で来たわけではなく、淡いブルーのドレスを着た女性が後ろについていることに気付いた。

橘泉は不思議そうに尋ねた。「この女性は誰ですか?知っていますか?」

榊詩門は最近帰国したばかりだったため、首を振って「知りません」と答えた。

藤丸詩織はしばらく注意深く見てから言った。「城之内祐希よ。お兄さん、以前レストランでのことを覚えてる?」

橘泉は真剣に思い出そうとして、不確かな口調で言った。「私と契約を結びたがっていた人?」

藤丸詩織は頷いて「そう」と答えた。

橘泉は納得したように頷いて「そうか、彼女か」と言った。

城之内祐希は桜井蓮の後ろについて歩きながら、彼の背中を見つめ、歯ぎしりしそうなほど腹が立っていた。

彼女は待ってほしいと声をかけたい衝動に駆られたが、周りにはまだたくさんの記者がいたため、笑顔を保ちながら小走りで追いついた。

彼女は桜井蓮の腕に手を回そうとした。