周防司は軽く咳払いをして、鼻を擦りながら、気にしないふりをして手を振った。「大丈夫だよ、じゃあ先に行くね」
振り向くと、ちょうど桜井蓮の姿が目に入り、急いで追いかけて個室に入った。向かいの個室に目をやると、嬉しそうに言った。「蓮、この個室いい場所だね。向かいの藤丸詩織たちが見えるよ」
周防司は不満げに言った。「藤丸さんのお兄さん、本当に冷たいよね。あんなに長く話したのに、個室に入れてくれなかった」
桜井蓮は冷笑して言った。「警戒されるのは当然だ」
周防司は顔をそらし、言い訳をした。「入ろうとしたのは、君と彼女の仲を取り持とうと思ってさ」
桜井蓮は信じない様子で、「藤丸詩織と仲良くなりたかっただけだろう」
周防司は認めざるを得なかった。「恋は諦めたからといって消えるものじゃない。自分なりに頑張りたいんだ。それに、君が積極的じゃないからさ」
桜井蓮は冷たい目で周防司を見て、警告した。「藤丸詩織に近づくな」
周防司は黙ったまま、心の中で桜井蓮に反論した。自分のことを先に考えろと。
彼は桜井蓮の隣にいる女性に気づき、不思議そうに尋ねた。「この人誰?見たことないけど、前に話したこともないよね」
桜井蓮は言葉に詰まり、城之内祐希との関係をどう説明すればいいか分からなかった。
城之内祐希は唇を歪めて笑いながら言った。「私は桜井蓮が人を刺激するための道具よ」
周防司は理解したものの、桜井蓮を馬鹿を見るような目で見た。もし自分なら絶対にこんな手は使わない、こんなやり方では相手をますます遠ざけてしまうだけじゃないか。
チャリティーパーティーの司会者が準備を整えた。
司会者:「ただいまよりチャリティーパーティーを開始いたします!今回のオークション品は全て善意の方々からの寄付によるもので、皆様の落札金額は全額、貧困地域の支援に充てられ、その地域の発展に役立てられます」
参加者たちは人脈を広げたいと考え、寄付された品々は珍しいコレクション品ばかりで、会場は熱気に包まれ、次々と値段が上がっていった。
今出品されているのは、世界的トップデザイナーがデザインしたイヤリングだった。
藤丸詩織:「100万円」
藤丸詩織の声が響くと、会場が静まり返った。最初からこんな高額な値段をつけるとは誰も予想していなかったからだ。