110 料理も楽しくなった

蘇我紬が買う食材は前日に考えておいて、メモに記録しておいたので、スーパーに着くと、すぐに目的の物に向かった。

三十分ほどで、蘇我紬はこれらの買い物を済ませることができた。

残りの時間は、自由に使える時間で、彼女はゆっくりと一周して、他に欲しい物を見つけたら、カゴに入れていった。

蘇我紬のこの頃の出費は、かなり大きかった。

彼女は以前はお金のことをそれほど気にしていなかった。影山家にいた時は、お金の心配をする必要がなかったからだ。

でも、これからは違う。子供が生まれたら、全て彼女一人で負担しなければならない。

影山家にお金を要求するようなことは、彼女にはできない。だから先日、貯金の大部分を不動産に変えて、将来の保証を作っておいた。

残したお金は、使うためのものだった。

しかし、彼女は細かく使うようになっていた。

影山瑛志は明らかに良質なジャガイモを見ていたが、蘇我紬は敢えて隣の見た目の普通な方を選んだ。彼は野菜の選び方は分からないが、蘇我紬にとって高いものが必ずしも良いとは限らないのだろう。

多くの人が自然な野菜を食べたがるので、影山瑛志も何も言わなかった。

しかし蘇我紬が肉を手に取った時、影山瑛志は即座に彼女の手を掴み、その手を下ろさせた。

そして店員に「こちらの肉を全部包んでください」と言った。

包もうとした店員は明らかに驚いて、「全部ですか?」と尋ねた。

目の前には半頭分の豚肉がある!

しかも全て上質な肉で、一頭の豚から一斤も取れない量だ。

影山瑛志は頷いた。

しかし蘇我紬に白い目で見られ、彼女は急いで遮って言った。「こんなに多くては、絶対に食べきれないわ。そんなに要らないから、二斤だけにして」

「二斤じゃ誰が食べるんだ?」

「私はいつも一斤買って、食べ終わったらまた買うわ。新鮮な方が好きじゃないの?」

「...」

影山瑛志は鼻を撫でながら、店員に二斤を量らせた。店員は心の中で後悔していた。余計なことを言わずに、すぐに量れば良かったのに。今日の歩合給は満額になったのに。

これは最高級の豚肉なのだから。

肉を持ち上げてカートに入れると、影山瑛志は自ら進んで押し続けた。