207 何を注射したの

晴香は続けて言った。「私はもうすぐ手術があるので時間が急いでいます。蘇我さんの状況はご覧の通りで、いつ自傷行為に及ぶかわかりません。できれば、今すぐ検査と治療を受けさせるのが最善の結果だと思います」

二人のボディーガードは互いに顔を見合わせ、晴香に頷いて、彼女たちを中に入れた。

白川蓮のことは知らなかったので、蘇我紬の家族だと思い込んでいた。

とはいえ、ボディーガードは何度も影山瑛志に電話をかけ続けたが、一向に応答がなかった。

白川蓮が入室すると、蘇我紬がベッドで静かに横たわって眠っているのが見えた。晴香は入室するなり、すぐに声を落として、先ほどの状況を全て説明した。

そして注意を促した。「蘇我さんの状態はかなり深刻です。体の傷は順調に回復していますが、できるだけ早く治療を受けさせた方がいいでしょう」

白川蓮は蘇我紬の状態が何であるかよく分かっていた。

彼女は適当に頷いて、小声で言った。「分かりました。私は影山瑛志が来るのを待って、彼女を治療に連れて行きます。ご迷惑をおかけしました」

「いいえ、あなたが時間通りに来てくれて良かったです。彼女が目を覚ましても、私には見守る時間がないので。このような患者さんを一人にしてはいけません。見知らぬ人も刺激になりかねません。そういうわけで、あなたが付き添っていてください」

「はい、ありがとうございます」

白川蓮は晴香が出て行くのを見送り、すぐにベッドの側に行った。病床に静かに横たわる蘇我紬を見て、軽くため息をつき、諦めたように言った。「あなたは本当に運がいいわね。影山瑛志はあなたのためなら、人に生きる道を残さないほどまでに…」

白川蓮は話しながら、服の中から注射薬を取り出した。透明で結晶のような液体だった。

この薬を普通の人に注射しても大きな悪影響はないかもしれないが、精神疾患を持つ人には致命的になる可能性がある。白川蓮は目を細め、冷たい笑みを浮かべながら、輝く目で薬剤を少しずつ蘇我紬の体内に注入した。

数分も経たないうちに、蘇我紬は苦しそうに目を開けた。口の中がカラカラで、腹部に熱い感覚が走り回り、全体的に非常に具合が悪い状態だった。

蘇我紬は苦しそうに眉をひそめ、虚ろな目で天井を見つめながら意識を取り戻そうとしていた。