269 それなら違う

夏川澄花は意味深く「ふーん」と声を出した。

彼女はゆっくりと携帯を耳から離し、テーブルの上に置いて、スピーカーフォンにした。

白川蓮の声が一気に大きくなり、衣擦れの音までもがはっきりと聞こえた。

この時、夏川澄花も本題に入った。「そう、じゃあまず解毒剤を私に渡して。死ぬほどの苦しみに対してどれだけ恐れているのか、見せてもらおうかしら?」

白川蓮は眉をひそめ、彼女を睨みつけた。「何を言ってるの、夏川澄花。蘇我紬はあなたの言う解毒剤なんて見つけてないわ」

「人が見つからないからって、先に要求できないわけ?あんた自分が何者か分かってんの?そんな嘘を信じると思ってるの??」

夏川澄花の言葉の応酬に、向こう側の白川蓮は言葉を失った。

蘇我紬はこちらで聞いていて、思わず拍手喝采し、夏川澄花に向かって無言で拍手を送った。