267 電話が来た

思いがけず、夏川澄花は気にも留めずに言った。「もっと自分に自信を持ってよ。紬、冗談じゃないわ。芸能界ではブランド価値のある高級なものが重宝されるの。ファンに見せるのも一つだけど、人脈を広げるためにもそういうものが必要なのよ」

蘇我紬は頭を掻きながら、「そうね、ブランド価値って分かってるわ。でも私なんて何者でもないし、ブランドなんてないわ」

夏川澄花は首を振り続けた。「ちょっと待って。紹介したい人がいるの。信じて。彼女は国内外で有名なパティシエよ。芸能界だけじゃなく、本当のお金持ちやセレブの奥様たちにも大人気なの」

蘇我紬は曖昧に頷いた。「すごいね...」

「当たり前よ。二人を紹介するから待ってて。絶対、彼女はあなたのことが気に入るわ。彼女のブランドは最高級で、海外でも大人気。彼女を通じて有名になれるわよ」

その言葉に蘇我紬は心が動かされた。夏川澄花の提案は良い選択肢だった。もし店を開いて常連客で名を上げようとすれば、それは時間の積み重ねが必要で、長期戦になる。

短期間では効果は出ないだろう。

でも夏川澄花の言う方法は違う。

それは本当に他人の力を借りて名を上げることだ。

蘇我紬は笑いながら丁重に断った。「目的があまりよくないわ。他人を利用して自分を売り出すなんて、ちょっと...」

夏川澄花は考え込んだ後、確信を持って頷き、きっぱりと言った。「その通りね。白川蓮みたいな女なら確かによくないわ。でも彼女なら違う。むしろ力を貸してくれるはずよ」

「どうして?」

「彼女は才能ある人を大切にするの。あなたが彼女より有名になっても気にしないわ。もしあなたがもっと活躍して、スイーツの影響力を広げられたら、彼女はきっと喜ぶわ。彼女は人生をスイーツに捧げてきたから」

蘇我紬は魅了されて、尊敬の念を抱きながら思わず言った。「そんな人、本当に尊敬できるわ」

「へへ、このクッキーもすっごく美味しいし、このとろけるケーキも外で売ってるのの百倍も美味しいわ!!!!」夏川澄花は感動の声を上げた。

「成功したら、紬、有名になったらサインをたくさんちょうだいね。売れるわよ、へへへ」

夏川澄花は上機嫌で考えていた。

その考えに、蘇我紬は苦笑いしながら、「パティシエのサインは芸能人ほど価値がないわよ。あなたのサインを売って、お金をあげるわ」