314 離れる

影山瑛志は昨日ずっと蘇我紬のそばにいなかったことを後悔し、それが悪人に隙を与えてしまった原因だと思った。

今この瞬間、できることなら、あの男を引っ張り出して思い切り殴りたかった!

……

林与一が再び目を覚ましたのは、警察に起こされたときだった。

部屋を見回しても蘇我紬の姿が見えず、彼女が警察に通報したことを理解した。

でも、警察は犯人を捕まえられるのだろうか?

林与一は自分の腕前には自信があったが、それでも相手に誘拐されてしまった。

「林さんですね?状況について少しお聞きしたいことがあります」警察官が警察手帳を見せた。

蘇我紬が通報したのなら、協力するしかない。

林与一は昨夜のことを慎重に思い出した。「昨夜、仕事帰りに車で帰宅途中、一台の車を通り過ぎる際に、黒い車の中で誰かが黒い頭巾を被せられているのを見かけました。体型が蘇我さんに似ていたので、後をつけました。ある倉庫の前で、誘拐された人が蘇我さんだと確信しました」