316 君は綺麗だから

影山瑛志は久世澪との電話を切ると、すぐに夏川澄花の番号に電話をかけた。

この時、夏川澄花はすでに蘇我紬を自分の私邸に連れて来ていた。

夏川澄花は着信を見て、蘇我紬を見つめながら、「紬、影山からの電話よ……」

蘇我紬は夏川澄花に微笑みかけ、「大丈夫、私がここにいることは言わないで」

夏川澄花は軽くため息をつき、通話ボタンを押してスピーカーフォンにした。

電話が繋がるや否や、夏川澄花が話す前に影山瑛志の声が聞こえてきた。「澄花、紬は君のところに来てないか?夜に帰ってきたら部屋にいなくて……彼女の安全を確認したいんだ」

影山瑛志は考えた。蘇我紬は昨夜のことでまだ傷ついているはずだ。夏川澄花が側にいて慰めてくれれば、少しは気が紛れるかもしれない。

しかし、その言葉は蘇我紬の耳には、影山瑛志がその件を気にして、自分を探しに来たくないのだと聞こえた。