「僕が愛しているのは君という人であって、君の体じゃない。一緒に向き合っていきたい、逃げ出したくない。ごめんね紬、一人で冷静になれなんて言うべきじゃなかった。ずっと側にいるべきだった。僕が悪かった」
「君も僕を置いていかないでくれる?本当に君を失うのが怖いんだ」
影山瑛志は蘇我紬をしっかりと抱きしめ、まるで次に彼女が去ってしまうかのように、彼女を体の中に溶け込ませたいかのように、離したくなかった。
蘇我紬は感動で鼻が詰まり、この瞬間、息苦しくても甘んじて受け入れ、影山瑛志をしっかりと抱きしめ返した。「瑛志、ありがとう。こんな言葉をかけてくれて、ありがとう」
蘇我紬は涙をこらえながら、声を詰まらせて言った。「でも瑛志、昨夜あの人と何も起こらなかったの。私はまだあなたの紬よ、最初から最後まであなただけのものよ」
影山瑛志は優しく蘇我紬を離し、愛情深く彼女を見つめた。「信じているよ」
何を言っても君を信じている。
影山瑛志は疲れた様子で、目の下にクマができ、顎にはヒゲも伸びていた。
蘇我紬はゆっくりと影山瑛志の頬に触れ、心配そうに言った。「ごめんなさい、心配させてしまって。もうこんなことはしません」
蘇我紬は両手で影山瑛志の顔を包み、影山瑛志はその手を握り、頭を下げてキスをした。
この時のキスは強引でありながら甘美で、濃密な愛情と別れ難い気持ちが込められていた。
夏川澄花は見るに耐えず、部屋の中に逃げ込んだ。
林与一は物音を聞いて出てきて、ドアの前に立ち、ちょうどその光景を目にした。
愛し合う二人の極みだった。
林与一の心臓が跳ねた。
蘇我紬が息苦しそうになるまで、影山瑛志は彼女を解放しなかった。
蘇我紬の顔は真っ赤に染まり、冬の柿のようだった。
彼女が目を上げると林与一がドアの前に立っているのが見え、その瞬間地面に穴があれば入りたいと思った。
さっきのことは全部見られていたに違いない。
蘇我紬は影山瑛志の首に顔を埋め、赤面しながら言った。「瑛志、私を信じてくれてありがとう。でも私があの人を呼んだのは、このことをはっきりと説明しなければならないからなの。これからも私たちの間に隔たりができるのは嫌だし、あなたに会うたびに罪悪感や申し訳なさを感じたくないの」
彼女は、この件を完全に解決してこそ、心が安らぐと思った。