330 花束を持って会う

でも、これはこれでいいことだわ。影山瑛志が彼女と赤ちゃんのことを本当に大切に思っているからこそ、妊娠の知らせを家族に急いで伝えたのだから。

蘇我紬は病院で長い時間を過ごし、おじいさんと多くの話をした。おじいさんの回復具合が良好なのを見て、一日中気分が良かった。

夕暮れ時、蘇我紬が帰ろうとしたとき、久世澪が彼女の手を引き止めた。「紬、もう少し待ってから帰りましょう」

蘇我紬は少し困惑して久世澪を見つめた。「どうしたの、お母さん?」

影山瑛志はあと2時間で仕事が終わる。もし家に帰って彼女がいないのを見たら、心配するかもしれない。

久世澪は少し目を伏せ、ちらちらと目を動かしながら、「せっかくおじいさんに会いに来たんだから、もう少し一緒にいてあげましょう。普段からおじいさんはあなたのことを恋しがっているのよ」

久世澪は少し後ろめたさを感じながらも、表情には出さず、適当な理由をつけて蘇我紬を引き止めた。

どうせ全ては影山瑛志が来てからわかることだから。

蘇我紬は影山海人を見た。実は彼女は一日中ここにいて、おじいさんも休息が必要なはずだった。

しかし、おじいさんは笑みを浮かべながら彼女を見つめた。「紬、もう少し座っていきなさい。おじいさんは年を取って、賑やかなのが好きなんだ。あなたがそばにいてくれると、おじいさんもずっと嬉しいんだよ」

蘇我紬はようやく疑問を感じなくなり、再び座り直した。「じゃあ、もう少しおじいさんとお話ししましょう。おじいさん、早く良くなってくださいね。曾孫があなたに会うのを待っているんですよ!」

影山瑛志には、後で説明するしかない。

きっと影山瑛志は怒らないはずだと、彼女は信じていた。

「はっはっは、そうだね。おじいさんも曾孫に会うのが楽しみだよ!」影山海人は慈愛に満ちた笑顔を浮かべ、心配そうな表情も和らぎ、目尻や眉にも笑みが宿った。

傍らで見ていた久世澪も、ますます満足げな様子だった。

蘇我紬はさらに2時間座り続けた。

窓の外はすっかり暗くなっていた。

蘇我紬はしきりに窓の外を見ては、心の中で不安を募らせていた。

影山瑛志はもう仕事が終わっているはずよね?

影山瑛志は私が病院でおじいさんに会いに来ていることを知らないはずよね?

影山瑛志は私が見つからなくて心配しているんじゃないかしら?