十分ほど歩いてから、夏川澄花はようやく立ち止まり、蘇我紬の目隠しを解いた。
蘇我紬のまつ毛が震え、ゆっくりと目を開けて、周りの明るさに慣れていった。
目に入ってきたのは数え切れないほどの花々で、まるで花の世界に迷い込んだかのように、芳香が鼻をくすぐった。
夜だったが、花々の上には小さな夜灯りが飾られ、花々をより一層引き立てていた。
蘇我紬が目を開けた瞬間、周りの人々が歓声を上げ、バラの花びらが敷き詰められた道が彼女の足元から伸びていた。その道の先には影山瑛志が立っており、巨大なキャンドルで作られたハートの中にいた。
蘇我紬は驚いて口を押さえ、鼻が詰まり、目に涙が溜まった。
彼女は一歩を踏み出し、影山瑛志に向かって歩き始めた。
一歩、二歩、三歩...九歩。
一歩一歩、蘇我紬は慎重に歩を進め、一歩一歩、はっきりとその感覚を感じ取りながら、最後の一歩でハート型のキャンドルの中に入った。