もちろん、警察署に行くのは影山瑛志が予約を手配してくれたのだ。
林与一が篠原澄佳を連れて警察署に着いた時、影山瑛志と蘇我紬も既にいた。
篠原澄佳は蘇我紬を見るなり、思わず林与一の後ろに隠れるように身を寄せた。
彼女はまだ蘇我紬にどう接すればいいのか分からなかった。
もし本当に利用されていたのなら。
蘇我紬はそんなことは気にしていなかったが、篠原澄佳に対する印象は確かに良くなかったため、ただ淡々と篠原澄佳を一瞥しただけで、顔を影山瑛志の方に向けて話し始めた。
「あの録音、警察に渡した方がいいんじゃない?」蘇我紬はバッグからUSBメモリを取り出した。
来る前に、蘇我紬は携帯の録音データをUSBメモリに移しておき、いつでも警察に渡せるようにしていた。
影山瑛志は蘇我紬のUSBメモリを持つ手を握り、人目につかないように包み込んで、小声で言った。「急がなくていい。白川蓮はあの日、俺に自分から出てくることを望ませると言っていた。他にも何か持っていて、お前に不利なものがあるかもしれないと心配なんだ。」
蘇我紬は思い返してみると、確かにそんなことがあったような気がして、黙ってUSBメモリをしまい直した。
影山瑛志と蘇我紬が今回来たのは、白川蓮が何を話すのか聞きたかったからでもあった。もしかしたら白川蓮が感情的になって、何か話してしまうかもしれないと思ったのだ。
警察はすぐに白川蓮と篠原澄佳の面会を手配した。
鉄格子越しの面会だった。
白川蓮は最初篠原澄佳を見ても誰だか分からなかったが、その横に立つ林与一を見て、はっと気付き、軽蔑するように冷笑した。「ああ、林奥様じゃないですか?」
影山瑛志と蘇我紬は隅の方に立っていたため、白川蓮には気付かれなかった。
林与一は相変わらず無表情だったが、篠原澄佳は白川蓮を見て眉をひそめた。「あなたが白川蓮?橘健一に私に連絡させたのはあなた?」
篠原澄佳は来るまで、LINEで連絡を取っていたのが橘健一だということしか知らなかった。そして橘健一の背後にいる人物について何度も尋ねたが、橘健一はいつもはぐらかしていた。
今、白川蓮を目の当たりにしても、篠原澄佳はまだ信じられない様子だった。