359 駒として

しかし白川蓮は今、完全に自分の世界に浸っており、絶えず首を振って否定していた。「嘘なはずがない!絶対に!」

どうして嘘なんかあり得るだろうか?

彼は自分に何度も本当だと約束したのに。

白川蓮は崩壊したように頭を抱えた。

……

篠原澄佳は相手が帰国して会いたいと知った時、内心不安になった。

しかし数日経っても、送ったメッセージは石を水に投げ入れたかのように、まったく返信がなかった。

篠原澄佳はそのチャットの履歴を見つめながら、心が恐怖で満ちていた。

何を恐れているのか?

彼が訪ねてきて、協力を求め、また蘇我紬を害そうとすることを?

でも今回は彼女はもう手を出す勇気がなかった。

彼女の動画はまだ久世澪のあの女の手の中にあるのだから。

動画が流出したら、もう生きていけない。

そのとき、携帯が鳴った。

篠原澄佳は驚いて手が震え、携帯をソファに落としてしまい、表情は恐怖に満ちていた。

携帯が何度も鳴り続けた後、篠原澄佳はようやく少し落ち着きを取り戻し、携帯を手に取った。着信表示が林与一だと分かると、彼女の心はようやく安堵した。

「与一ちゃん……」

「会いたい。話がある。」

林与一は篠原澄佳の言葉を待たずに、電話の用件を率直に告げた。

篠原澄佳の心の中には実は喜びがあった。林与一が自分から会いたいと言うのは珍しく、これは長い間で初めてのことだった。瞬時に、彼女は嬉しそうに尋ねた。「どこにいるの?ママが会いに行ってもいい?」

「あなたの家の近くのカフェで。」林与一の口調は相変わらず淡々としており、そう言うと電話を切った。

30分後。

二人はカフェで向かい合って座っていた。

篠原澄佳は先の出来事があったため、林与一を見ると、どう接していいか分からず、今は少し戸惑っているようだった。「与一ちゃん、ママは……」

「背後であなたと協力した人が誰か知りたいんでしょう?」林与一はコーヒーカップを両手で持ちながら、篠原澄佳の言葉を遮って冷たく切り出した。

影山瑛志はその日電話で全て話してくれた。全ては白川蓮という女がやったことで、篠原澄佳も騙されていた可能性があると。

彼は何日も考えた末、篠原澄佳にこれらを話すことを決めた。

できれば、篠原澄佳に直接蘇我紬に謝罪してもらいたいと思っていた。