影山瑛志は腕の中で甘く眠る人を見つめながら、そっと寝室を出て、離れた書斎へと向かった。
早乙女燐が既に中で待っていた。
「調査の進捗はどうだ?」影山瑛志の表情は冷たく、先ほどの蘇我紬に対する態度とは別人のようだった。
「彼らの機密保持は徹底していますが、まもなく結果が出るはずです」早乙女燐は書類を影山瑛志に手渡した。
影山瑛志はそれを手に取って軽く目を通すと、横の机に投げ置いた。「江口家は海外での発展が順調だったのに、突然帰国したということは、何か考えがあってのことだろう。引き続き調査を進めろ。スピードを上げるように言っておけ」
遅くなれば、江口希美があの女が再び蘇我紬を離れさせようとするのではないかと懸念していた。
江口希美のことを思い出し、影山瑛志は早乙女燐に言い添えた。「明日、江口さんに連絡を入れて、会社に来るように伝えろ」
「承知いたしました」早乙女燐は理由を問うことなく、言われた通りにすればよいと心得ていた。
全てを指示し終えると、影山瑛志は部屋に戻った。
そっと布団をめくって入ると、横になった途端、蘇我紬が反対側から転がるように寄ってきて、彼を抱きしめた。
安らかな一夜が過ぎた。
翌日、蘇我紬が目を覚ますと、隣はすでに空っぽだったが、ベッドには微かな温もりが残っていた。
蘇我紬が部屋を出ると、早乙女燐が外で待機していた。「早乙女さん、影山瑛志は行ってしまったの?」
「若奥様、影山社長は用事があって先に出られました。私に若奥様の見守りを命じられ、もしお帰りになりたければお送りするようにとのことです」早乙女燐は丁寧に答えた。
「影山瑛志がいないと、ここも面白くないわね」蘇我紬は小さく呟いた後、早乙女燐に向かって言った。「じゃあ、少し待っていてください。支度が済んだら帰りましょう」
「かしこまりました」
すぐに、蘇我紬は来た時と同じ道を帰路に就いた。来る時は外の景色をよく観察していなかったので、今回は一人で帰るついでに、車窓の外の景色を眺めることにした。
草原の縁には多くの大木が植えられていたが、葉も随分と落ちていた。道は遠く曲がりくねっており、車が前に進むにつれて草原が徐々に後退していき、一定の区間を過ぎるごとに異なる景色が現れた。