379 告げる

別荘はとても洗練されたヨーロッパ風で、室内の家具や調度品も伝統的な西洋スタイルに似ており、蘇我紬は海外に住んでいるような感覚を覚えた。

「ここは本当に素敵ね!」蘇我紬は思わず感嘆の声を上げた。

彼女は一生海外に住むことはないだろうが、このような体験ができるだけでも素晴らしい!

「君が気に入ってくれると思っていた」影山瑛志は足を止めることなく、彼女を部屋まで抱きかかえ、そっとベッドに寝かせた。

「どうやってこの場所を見つけたの?」蘇我紬は起き上がって尋ねた。

「最近引き受けたプロジェクトで、相手から偶然この土地のことを聞いてね。普段はあまり人が来ないから、君を連れて来てみようと思ったんだ」影山瑛志は彼女の隣に座り、説明した。

「プロジェクト」という言葉で、今日の江口希美の言葉が再び頭に浮かび、蘇我紬は表情を引き締めて深く息を吸い、影山瑛志を見つめた。「瑛志、私はずっとあなたの仕事のことを聞かなかったけど、今回だけは教えて。会社は今どういう状況なの?」

影山瑛志は一瞬驚いたが、すぐに何かを悟ったように表情を曇らせた。「江口希美が何か言ったのか?」

会社のことは彼はいつも蘇我紬の前であまり話さず、蘇我紬も尋ねることはなかった。家族も蘇我紬にはほとんど話さなかった。しかし江口希美が戻ってきたとたん、蘇我紬が尋ねてきた。

江口希美以外に、誰が話したとは考えられなかった。

「彼女が今日私に言ったの。私のあの件で会社は多くの取引先を失い、このままだと会社は潰れてしまう。江口家だけが救えるけど、そのためには彼女があなたと結婚しなければならないって」

蘇我紬は、これは自分一人の問題ではないと感じ、影山瑛志を信じるべきだと思った。

だから彼女は躊躇することなく、江口希美との会話のことを影山瑛志に話した。

会社の実態はまだ分からないが、江口希美に振り回されるわけにはいかなかった。

そして世の中に乗り越えられない壁はない。たとえ江口希美の言うことが本当だとしても、蘇我紬は必ず両立できる方法があるはずだと思った。ただ、まだ見つかっていないだけだ。

影山瑛志はそれを聞いて、一瞬ですべてを理解した。

つまり江口希美は自分との交渉が上手くいかなかったので、蘇我紬を通じて彼女を追い出そうとしているのか?