385 私は嫁がない

「江口お爺様、ありがとうございます!」影山瑛志は喜びの表情を浮かべながら、江口天真と握手を交わした。「よろしくお願いします!」

話が終わると、影山瑛志は席を立って辞去した。

江口家の別荘を出たところで、帰ってきた江口希美と出くわした。江口希美は即座に影山瑛志の姿を認めた。

普段なら、このような出会いは彼女にとって嬉しいものだったが、今、影山瑛志の顔に隠しきれない笑みを見て、彼女の心は「ドキッ」と鳴った。

「瑛志さん、お爺様とどんな条件を話し合ったの?」江口希美は急いで前に出て尋ねた。「私と結婚しないって言ったの?」

帰り道で、江口希美は蘇我紬の言った言葉を何度も何度も考えていたが、影山瑛志がお爺様とどんな条件で交渉するのか想像もつかなかった。

今、影山瑛志があんなに嬉しそうに笑っているのを見て、彼女の心は乱れに乱れた。