393 過去の恨みを忘れて

「蘇我紬さん、ありがとう。私のために弁解してくれて、本当にありがとう」

蘇我紬は彼女が押したと断言することもできたはずだ。そうすれば影山瑛志は一生彼女を憎むことになっただろう。でも蘇我紬は彼女の疑いを晴らすことを選んだ。

「そんなに感謝しないで。ただ誤解されてほしくなかっただけよ。私も誤解された経験があるから、辛い気持ちはよく分かるの」蘇我紬はティッシュを江口希美に渡しながら、首を振ってゆっくりと言った。

「それに、子供ができてから、私はより優しくなったの。子供たちのために良い手本になりたいから」

蘇我紬はお腹に手を当て、慈愛に満ちた優しい表情を浮かべた。

「あなたのことは、瑛志から全部聞いたわ。正直に言うと、あなたが私に瑛志から離れるように説得した時は腹が立ったけど、それ以上に瑛志をより信じるきっかけになったの」