江口天真は涙をこらえながら、江口希美を近藤昭陽に託し、すべては言葉にせずとも通じ合っていた。
新郎新婦は互いに微笑み合い、司会者と列席の来賓たちの見守る中で指輪を交換し、目に涙を浮かべた。
蘇我紬と影山瑛志は客席で、瞳に涙を光らせながら、二人の手を固く握り合っていた。
結婚式は順調に進み、式が終わると江口希美は披露宴用のドレスに着替え、近藤昭陽と共に四方の来賓に酒を注ぎ、終始優雅で温かな笑顔を浮かべていた。
それから半月が過ぎ、平穏な日々の中、影山家に嬉しい知らせが届いた。
影山海人が退院できるというのだ!
影山海人は長期の入院治療を経て、常に前向きな心持ちで過ごしてきた結果、医師からは回復状態が良好だと言われ、各種検査の数値が正常となった後、久世澪が退院の手続きを行い、影山瑛志と蘇我紬は病室で影山海人に付き添っていた。
帰り道では、四人とも喜びに満ちていた。
「お爺様、おかえりなさい!」
家に着くなり、蘇我紬は急いで影山海人のためにドアを開けた。
見慣れた家の中、見慣れた調度品を見て、影山海人は笑みを浮かべながら感慨深げに言った。「やはり我が家が一番だな。病院はいつも寂しかったよ。」
「お爺様の体調がこんなに良くなったんですから、もう病院に行くことはないはずです。」蘇我紬は甘く微笑んだ。
人は病気の時だけ病院に行くものだから。
蘇我紬の言葉に影山海人は楽しそうに笑い、「やはり紬は言葉が上手いね!私はまだひ孫を抱くのを待っているんだからね!」
皆が笑い、蘇我紬の頬は赤く染まった。お爺様の様子を見ていると、江口お爺様のことを思い出した。
もし江口お爺様も自分のお爺様のようであれば、あれほど多くのことを心配する必要はなかったかもしれない。
影山瑛志は最近起きた出来事を影山海人に話し、江口天真が危篤状態だと聞いた時、影山海人の表情に悲しみが浮かんだ。「昔はよく一緒に集まったものだが、今となっては世の中何が起こるか分からないものだな!」
江口天真の命が危機に瀕し、再び意識を失ったのは一ヶ月後のことだった。執事が直ちに救急車を呼び病院に搬送し、江口希美はそれを知るや否や必死に病院へ向かい、途中ずっと焦りながら今すぐにでも父の元へ飛んでいきたい思いだった。
近藤昭陽は車を運転しながら、心中穏やかではなかった。