387 開業大吉

「お兄さん……」江口希美はこの現実を受け入れるしかなく、一瞬で悲しみが込み上げてきた。「でも、一つお願いがあります。おじいちゃんには私が彼の重病のことを知っていることを言わないでください。おじいちゃんがもっと心配するのが怖いんです。」

「わかった」影山瑛志は頷いて承諾した。

約束を得た江口希美は立ち上がって、病院に戻った。

病室に入るとすぐに、江口天真が目を覚ましているのを見て、彼女は喜びに満ちた。窓際まで駆け寄り、「おじいちゃん、やっと目が覚めたのね、よかった!」

「心配をかけたな」今の江口天真は、声が弱々しかった。

「医者が言うには、ゆっくり休まないといけないし、興奮してはいけないって。ごめんなさい、おじいちゃん。私があなたを怒らせるべきじゃなかったの」江口希美は自責の念に駆られた。

「バカな子だね」江口天真は手を伸ばして、江口希美の頭を撫でた。「お前がこんな風になってくれて、おじいちゃんは嬉しいよ」

目が覚めてみると、孫娘が急に素直になっていた。

……

影山瑛志は家に戻るとすぐに、この件と江口家の状況について蘇我紬に話した。

蘇我紬は話を聞き終わると、突然江口希美に同情を覚えた。「最初は彼女がこんな状況だとは知らなかったわ。今考えると、彼女はかわいそうね。でも、お母さんは彼女を養女として受け入れてくれるかしら?もし同意してくれたら、彼女も影山家の一員になるわ。近藤家で辛い思いをしたなら、私たちも彼女を助けることができるわ」

「その件については既に母に話してある。特に異論はないようだ」影山瑛志は蘇我紬を見ながら答えた。

蘇我紬は頷いた。彼女は江口希美に対して、それほど大きな恨みはなかった。事態がここまで進展したのは、比較的良い結果だと言えた。

江口家と影山家の協力の件が解決した後、蘇我紬はまた家で退屈し始めたが、先日話したスイーツショップのことを思い出し、夏川澄花と新條結月に電話をかけ、午後に会う約束をした。

店舗は以前から選んでおいた場所で、あるカフェの隣にあった。三人はそこで待ち合わせた。

「紬、久しぶりね。会いたかったわ」新條結月は蘇我紬を見るなり、抱きしめた。