398 USBメモリ

影山瑛志は江口希美の葬儀の手伝いに忙しく、葬儀が終わってから、江口希美を連れて家に戻った。

数日ぶりに会った江口希美は、さらに憔悴し、痩せていた。眉目には常に暗い影が漂っていた。

世界で唯一の肉親を失うことは、江口希美にとって間違いなく大きな打撃だった。葬儀の間の徹夜も重なり、どんなに体力があっても持ちこたえられない時がある。

江口希美のその様子を見て、蘇我紬は胸が痛んだ。

蘇我紬はメイドを呼び、燕の巣を煮るように指示し、自ら前に進み出て江口希美の手を握り、慰めた。「希美さん、江口お爺様の死があなたにとってどれほど大きな打撃か分かります。でも、人は前を向いて生きていかなければならないでしょう?きっと江口お爺様も天国で、あなたがずっと落ち込んでいるのを望んではいないはずです。」

「このUSBメモリは、あの日江口お爺様があなたに渡すように私に頼んだものです。家に持ち帰って見ても、今ここで見てもいいです。でも、これを見た後は、元気を出して、以前のような状態に戻り、より素晴らしい人生を送ってほしいと思います。」

蘇我紬はUSBメモリを江口希美の手に渡し、真剣な表情で彼女を見つめた。

江口希美は手の中のUSBメモリを驚いて見つめ、「これは本当にお爺様が私に残してくれたものなの?」

蘇我紬は頷いた。彼女は中身を見たことはなかったが、きっと動画が入っているはずだった。

江口希美はもう待ちきれない様子で、「お姉さん、今すぐ見たいんですけど、いいですか?」

「ええ、いいわよ。」蘇我紬は承諾し、すぐにパソコンを持ってくるように人に頼み、USBメモリを差し込んで開いた。

フォルダの中には確かに動画が入っていた。

目に入ったのは見慣れた老人の顔で、耳に馴染んだ声が再び聞こえてきたが、どこか遠くに感じられた。江口希美は再び鼻が詰まり、涙が目に溢れた。

動画は長くなく、たった5分だったが、江口希美はこの5分が何倍にも感じられた。

動画を見終わると、江口希美は声を上げて泣き出した。「お姉さん、ありがとうございます!」

蘇我紬は優しく江口希美の背中をさすりながら慰めた。「江口お爺様が唯一心配していたのはあなたのことです。あなた自身も彼の期待に応えなければいけません。そうすることで、お爺様の御霊も安らかになれるでしょう。分かりましたか?」