ドアを出ようとした時、白川蓮は素早くナイフを取り出し、看護師の腰に突きつけながら脅した。「これから口を閉じていなさい。助けを呼ぼうものなら、今すぐここで殺すわよ」
看護師は恐怖で震えながら、黙って白川蓮を霊安室の前まで案内した。「お子様はこの中にいます。母親の名前が記載されているので、すぐに見つかるはずです」
白川蓮はそれを聞くと、看護師を突き飛ばしナイフを落として中に入った。
看護師はこの機会を逃さず、恐怖に駆られて逃げ出した。
白川蓮が奥へ進むにつれ、気温は下がっていき、まるで氷室に入ったかのようだった。
ここは寒すぎる。
赤ちゃんをこんなところに置くなんて?白川蓮は両腕を抱えて暖を取りながら、怒りの炎を目に宿した。
子供を見つけると、しわくちゃになった小さな体を見て、突然狂ったように既に冷たくなった赤ちゃんを抱きかかえて外へ走り出した。
医療スタッフはそれを見て、慌てて彼女を呼び止めようとし、中には彼女を捕まえようとする者もいた。「白川さん、赤ちゃんは既に亡くなっています。病院の規則では、ご遺体をお持ち帰りいただくことはできません」
しかし、白川蓮は何も聞こえていないかのように、スタッフの手を振り払って外へ走り続けた。
仕方なく、スタッフは最後に警察に通報した。
警察署のロビーで、白川蓮は依然として赤ちゃんを強く抱きしめていた。数人の医療スタッフが警察と交渉し、赤ちゃんを返してもらおうとしたが、白川蓮は心を失ったかのように、どうしても手放そうとしなかった。
警察と医療スタッフの説得により、白川蓮はついに赤ちゃんを手放した。
赤ちゃんの火葬の日、白川蓮は火葬場の方向をぼんやりと見つめていた。
その小さな体が火葬炉の中で高温に晒されることを想像すると、影山瑛志と蘇我紬の仲睦まじい姿が目に浮かび、この瞬間、彼女の意識は徐々に冴えてきた。
「瑛志、これは全部あなたが引き起こしたことよ。私との約束を破って私と結婚しなかった。私と結婚して幸せに暮らせたはずなのに、他の女を選んだ!」
「蘇我紬、あなたこそが人の恋愛関係に割り込んだ横取り女よ!あなたが現れなければ、私と瑛志はとっくに結婚していたはず!」
「そして私の子供、この世に幸せに生まれてくるはずだった。瑛志が認知さえしてくれていれば、死ぬことなんてなかったのに」