407 誘拐

しかし、涙は蘇我紬にとって何の役にも立たなかった。

両陣営が睨み合う中、影山瑛志が紬を守るために連れてきた護衛たちも防御の構えを取った。瑛志は紬を抱き寄せながら叫んだ。「蘇我力!紬と腹の子供に何かあったら、許さないぞ!」

蘇我力もこの時、恐れていた。

あれは影山家の子供なのだ!

最悪の場合、母子ともに死んでしまうかもしれない!

その時、彼らを取り囲んでいた者たちが動き出した。瞬く間に、影山瑛志と紬を守っていた護衛たちが次々と倒れていった。

最後には、影山瑛志と紬の側に残って守り続けられたのはたった四人だけとなり、しかもその四人も程度の差こそあれ、傷を負っていた。

紬は目の前の惨状を見つめ、蘇我力に冷笑を向けながら怒りを込めて言った。「まさか、あなたが白川蓮の手先になるなんて思わなかったわ。でも、私を捕まえるために、白川蓮も随分と手間をかけたのね!」