445 嘘をつく

影山暁人は影山瑛志を押しのけようとして、不満げに言った。「聞いても聞かなくても、もうあなたには関係ないでしょう。離してください。ここから出て行きます！」

影山瑛志は手を放すつもりはなかった。「どうして関係ないことがあるんだ？父さんには家族を支える責任があるからこそ、この四年間、紬を探し続けてきたんだ。」

影山瑛志も不思議だった。なぜこんなにも子供相手に辛抱強く道理を説いているのか、しかもこの感覚が全く嫌ではなかった。

しかし影山暁人は、影山瑛志が母子三人を見捨てたと思い込んでいた。彼は影山瑛志を押しのけて外に出ようとしたが、突然早乙女燐の手にある写真を見つけ、それを取ろうとした。

思いがけず、早乙女燐は写真を影山瑛志に手渡した。

影山瑛志が写真を一目見た瞬間、よく考える暇もなく、影山暁人はさらに怒って写真を奪おうとした。「返してください！それは私の写真です！」

影山瑛志は突然立ち上がり、身長差のせいで影山暁人の小さな手は空中でばたつくだけで届かなかった。

影山瑛志は再び写真を見て、そこにいる女性が蘇我紬だと確認すると、即座に断った。「この写真の人は私の妻だ。君には渡せない。」

一方、蘇我紬はトイレから戻ってこない影山暁人を長い間待っていたが、突然不安な予感が胸に込み上げてきた。彼女は緊張し始め、真剣な表情で影山浩司に尋ねた。「浩司、お兄ちゃんは本当にトイレに行ったの？こんなに長い時間トイレにいることなんて今までなかったわよ。」

さっき影山浩司の落ち着いた様子を見て深く考えずに信じてしまったが、今になって考えると、蘇我紬は兄弟で何かを相談していたのではないかと疑い始めた。そうでなければ、影山暁人が理由もなく離れるはずがない。

影山浩司は初めて蘇我紬のこんな厳しい表情を見て、急に怖くなった。目を泳がせながら、言葉を詰まらせて言った。「ぼ...僕もわからないけど、でもお兄ちゃんは本当にトイレに行ったんです...」

お兄ちゃんを裏切るわけにはいかない。もし知られたら絶対に怒られる。でも、ママがこんなに怖い顔をしている。

影山浩司は席に座ったまま、落ち着かない様子で指で輪を描き続けていた。

影山浩司の様子を見て、蘇我紬は心の中の推測がさらに確信に変わった。影山浩司は影山暁人の何かを隠していたのだ。