同時に、彼女の心には不安が芽生えていた。
この藤原家は、一体どんな家庭なのだろう?
とても神秘的で、強大な感じがする。
「私と一緒に時央に会いに行きましょう」藤原奥様が立ち上がった。
時田浅子は急いで後を追った。
彼女も少し気になっていた、自分の夫がどんな顔をしているのか。
さっき結婚証明書の写真を見ておけばよかった。
今から取り出すのは、かえって場違いな感じがする。
でも、毎月二百万円のお小遣いがあるなら、顔なんて本当にどうでもいい。
車は療養院に到着した。
時田浅子は車を降り、周囲を見渡した。
ここは高い壁に囲まれた大きな敷地で、至る所に監視カメラが設置されていた。
入るだけでも三つの門を通過しなければならなかった。
ここに住めるのは、一体どんな大物なんだろう!
自分は一体どんな家庭に嫁いだのだろう?
深く考えるのが怖くなった。
藤原奥様について一軒の独立した別荘の前まで歩いた。
数人の看護師姿の人々が即座に藤原奥様を出迎えた。
「こちらは時央の新婚の妻です。後ほど顔認証の手続きをお願いします。今後、彼女は藤原若旦那の世話のためにここによく来ることになります」
「はい」看護師は頷いて応じた。
時田浅子と藤原奥様が立ち去ると、看護師たちの目は驚きに満ちていた。
この地味な格好をした女の子が、藤原若旦那の奥様?
最近は、お金のためなら何でもする人がいるものね。
彼女たちは心の中で時田浅子を軽蔑した。
藤原若旦那は意識不明なのに、どうやって結婚して子供を作るの?
聞こえはいいけど、若奥様って。
実際は、藤原家の子孫を残すための道具に過ぎない。
藤原家の子供が生まれる時に体裁よく見せるため、名分を与えただけ!
お金のためでなければ、誰が植物人間と結婚したがるものか!
時田浅子は病室に入り、ベッドに横たわる男性を見た。
彼女の目は一瞬凝固した。
この男性がこんなにもイケメンだなんて!
そうか、この瞬間、藤原奥様のあの言葉にも納得がいった。
この男性が意識不明でも、確かに自分の方が分不相応だと感じた。
藤原奥様はベッドに近づき、息子を見る時の目が優しく穏やかになった。
「時央、母さんが会いに来たわ」
「白川先生、最近の時央の状態はいかがですか?」
「安定しています」白川先生は静かに答え、時田浅子を見て、「こちらが若奥様ですか?」
「はい」藤原奥様は頷き、「浅子、こちらに来て。話があります」
時田浅子はようやく視線を外し、藤原奥様についてソファの方へ行った。
白川先生も続いて近づき、手には診療記録を持っていた。
「私が時央の代わりにあなたを娶らせた最終的な目的を知っていますか?」藤原奥様は時田浅子に尋ねた。
時田浅子は首を振り、自分で推測せずに直接答えた。「奥様、わかりません」
「私のことはお母さんと呼んでください」
時田浅子は少し気まずそうにしながらも、「お母さん」と呼んだ。
藤原奥様はまたバッグから札束を取り出した。おそらく数十万円はあるだろう。
「これは呼び名を変えたお礼です」
「ありがとうございます、お母さん」時田浅子はすぐに受け取った。
このお金があれば、母にたくさんの栄養剤が買える!
母により快適な病室も用意できる。
母が退院したら、帝都でより良い家を借りて療養させることもできる。
お金があるって本当に素晴らしい!
時田浅子がお金を受け取る時の隠しきれない興奮を見て、藤原奥様の心には軽蔑の念が浮かんだ。
お金好きなのもいいことだ。
藤原家に最も多いのはお金なのだから。
「あなたに時央の子供を産んでほしいの」藤原奥様の声が再び響いた。
時田浅子:……
やっぱり、お金は簡単には稼げないものだ!