「疲れてなんかいないよ。全然疲れていないし、まだお母さんと正式に会ったことがないから、行かないのは失礼だよ」老人は時田浅子の肩を叩いた。「先に休んでいなさい。後で呼びに来るから」
老人は部屋を出て行った。
時田浅子はこの見知らぬ部屋を見回した。なぜか、藤原時央が6年以上もここに住んでいないのに、この部屋にはまだ彼の気配が漂っているように感じた。
彼のオーラは、それほど強いのだ。
藤原時央の部屋の装飾スタイルはずっとこんな感じだったのだろうか?
彼の心はなんて冷たいのだろう?
彼女は部屋の中へ歩いていくと、ベッドの横には仕切られた小部屋があり、中は広々とした書斎だった。
机の後ろにはガラスの棚があった。
中にはいくつかのトロフィーや賞状が飾られていた。
彼女は棚の一つの区画に、分厚いアルバムを見つけた。
急に好奇心が湧き、そのアルバムを取り出して最初のページを開いた。
赤ちゃんの写真が目に飛び込んできた。
時田浅子は一目で、これが藤原時央が生まれたばかりの頃だと分かった。
彼女は思わずページをめくってみた。
1歳までの写真がアルバムの大半を占めていた。
時田浅子が1歳の誕生日の写真に辿り着くと、突然笑い出した。
この写真を、藤原時央は破棄せずにこのアルバムに挟んでいたなんて!
写真の中の藤原時央はなんとプリンセスドレスを着て、おさげ髪の帽子をかぶっていた!
彼の顔立ちなら、女の子に扮しても信じられないほど可愛いに違いない!
時田浅子がさらにページをめくると、写真は突然2歳になっていた。
1歳から2歳の間には、日常の写真が一枚もなかった。
そして、3歳、4歳と続いていく……
各年齢で、たった1枚ずつしかなかった。
時田浅子は気づいた。3歳からの藤原時央の写真は表情が厳しく、笑顔が全くなかった。
6歳の時には、年齢に似合わない成熟さを持っていた。
彼女は覚えていた。藤原時央の父親は彼が生まれてすぐに交通事故で亡くなったことを。
これらの写真の状況から見ると、藤原様が亡くなったのは藤原時央が1歳頃だったようだ。
藤原時央は幼い頃から父親を失っていた。
そして彼女は父親を奪われた。
二人とも欠かせない父親の愛を失っていた。
時田浅子は視線を上げ、壁一面の栄誉を見つめた。