眉も目も鼻も唇も、すべてが立派に整っていた。
特にあの豊かで形の良い唇は、わずかに開いた花蕾のようで、二列の白い小さな歯が垣間見えた。
この小さな口は、人を誘い、また人を狂わせる。
「見えたか?」彼は尋ねた。
時田浅子は体がビリッとしびれたように感じ、慌てて後ろに下がった。
彼の声は低く掠れていて、人が抗えないような魅力を持っていた。
二人はとても近くにいて、その声は、かすかな電流と混ざり合って彼女の耳に入り込み、心の先までしびれさせた。
彼女の耳は少し熱くなっていた。
「暗すぎて、私もよく見えません。それなら、スマホのライトで照らして見てみましょうか?」
「もうすぐ着くよ」藤原時央は彼女にこれ以上近づいてほしくなかった。
おそらくあと10分ほどの道のりだ。
彼はこの10分間を使って、冷静さを取り戻す必要があった。
時田浅子は自分の席に戻り、窓の外を見つめながら、軽く窓の上下ボタンを押して、窓を少し下げた。
涼しい風が入ってきて、頬の熱さがすぐに和らいだ。
なぜだろう、彼女の心は、なぜか落ち着かないのだ!
5、6分後、時田浅子は遠くに明かりで輝く農園を見つけた。その光は山間にうずくまる巨大な龍のようだった!
「蘭苑」の二文字が特に目立っていた。
これは彼女が想像していた農園とはあまりにも違っていた。
こんなに大きいなんて、まるで観光地と言っても過言ではないほどの大きさなのに、農園と呼ばれているの?
白沢陸はカジュアルなパーカーを着て、マーチンブーツを履いて蘭苑の正門に立っていた。
彼は前髪をさっと払い、鼻をすすった。
時間を節約するために、彼はバイクで猛スピードで駆けつけたのだ!
しかも、コートも着ずに、このパーカー一枚で走ってきた。
なんてこった!
道中の風は刃のように冷たく、骨まで凍えるようだった。
今、彼の頭は刺すように痛んでいた!
「三郎様、道中で凍えてしまいましたね?こちらの湯たんぽを持って、手を温めてください」村上部長は急いで湯たんぽを差し出した。
白沢陸はそれを受け取り、胸に抱えた。
「藤原時央が今日もし俺をすっぽかしたら、明日にでも全メディアに俺たち二人の関係を公表してやる!」
村上部長は驚いた顔をした。「三郎様、藤原若旦那とどんな関係を公表するおつもりですか?」