眉も目も鼻も唇も、すべてが立派に整っていた。
特にあの豊かで形の良い唇は、わずかに開いた花蕾のようで、二列の白い小さな歯が垣間見えた。
この小さな口は、人を誘い、また人を狂わせる。
「見えたか?」彼は尋ねた。
時田浅子は体がビリッとしびれたように感じ、慌てて後ろに下がった。
彼の声は低く掠れていて、人が抗えないような魅力を持っていた。
二人はとても近くにいて、その声は、かすかな電流と混ざり合って彼女の耳に入り込み、心の先までしびれさせた。
彼女の耳は少し熱くなっていた。
「暗すぎて、私もよく見えません。それなら、スマホのライトで照らして見てみましょうか?」
「もうすぐ着くよ」藤原時央は彼女にこれ以上近づいてほしくなかった。
おそらくあと10分ほどの道のりだ。
彼はこの10分間を使って、冷静さを取り戻す必要があった。