村上部長は社長の豹変ぶりにはもう慣れていたが、今日はついていけなかった。
彼は時田浅子の方向を見て、この娘の身分が並大抵ではないことを知っていた。
「かしこまりました、三郎様。すぐに手配いたします」村上部長は手際よく退出した。
時田浅子は藤原時央の車のドアの側に歩み寄った。彼女は本来車椅子を押そうとしたのだが、藤原時央が彼女に手を差し伸べた。
彼女は仕方なく彼の腕を支えた。
藤原時央は車から降り、車椅子に座った。
白沢陸も近づいてきて、藤原時央のこの姿を見て、心が痛んだ。
彼は、人が目覚めたのだから、当然すべてが回復し、以前と同じように戻ったと思っていた。
藤原時央が帝都に戻った日に車椅子に座っていたのは、ただ目覚めたばかりで、まだ適応していなかっただけだと。
帝都の各界では密かに、藤原時央の両足が不自由になったと噂されていた。