村上部長は社長の豹変ぶりにはもう慣れていたが、今日はついていけなかった。
彼は時田浅子の方向を見て、この娘の身分が並大抵ではないことを知っていた。
「かしこまりました、三郎様。すぐに手配いたします」村上部長は手際よく退出した。
時田浅子は藤原時央の車のドアの側に歩み寄った。彼女は本来車椅子を押そうとしたのだが、藤原時央が彼女に手を差し伸べた。
彼女は仕方なく彼の腕を支えた。
藤原時央は車から降り、車椅子に座った。
白沢陸も近づいてきて、藤原時央のこの姿を見て、心が痛んだ。
彼は、人が目覚めたのだから、当然すべてが回復し、以前と同じように戻ったと思っていた。
藤原時央が帝都に戻った日に車椅子に座っていたのは、ただ目覚めたばかりで、まだ適応していなかっただけだと。
帝都の各界では密かに、藤原時央の両足が不自由になったと噂されていた。
「まだ良くなってないの?」彼は藤原時央の足を軽く蹴った。
「三郎様、冗談はやめてください!藤原若旦那の足はまだ回復していません」江川楓はすぐに制止した。
「この様子じゃ、三本目の足も駄目になったんじゃないか?」白沢陸はまさに口に歯止めがなく、思ったことをそのまま口にした。
江川楓はすでに拳を握りしめていた。
藤原若旦那の一言を待つだけで、彼は白沢陸を引きずり出し、しっかりと切磋琢磨するつもりだった!
時田浅子は白沢陸の言葉を聞いて、少し驚いた。
白沢陸と藤原時央はきっととても親しい友人だからこそ、こんなことが言えるのだろう。
ただ、その「駄目」という言葉が彼女の心に響き、少し不快に感じた。
「藤原若旦那の足は長く眠っていたため筋肉が弱っているだけで、だから車椅子に座っているんです。それに、すぐに回復するはずです!」
藤原時央は本来江川楓に手を出させ、白沢陸に対面の挨拶を贈るつもりだった。
時田浅子の声を聞いて、彼は突然怒りが収まった。
彼女の声は柔らかく、ゆっくりとしていて、表面上は彼の状態を説明しているだけだった。
しかし口調からは、白沢陸の言葉に反論し、少し庇うような感じが伝わってきた。
白沢陸は顔を上げて時田浅子を見た。
時田浅子の声が温かく柔らかく、まるで暖かい風が彼の心を撫でるようで、とても心地よかった!
本人の声はこんなに心地よいものなのか?