「お年寄り、あなたは時田浅子のご家族ですか?」
「はい、あなたは?」老人は顔を上げて尋ねた。
「私はレコーディングスタジオのスタッフです。救急車に同行してきました。」
「ありがとう。」老人は丁寧にお礼を言った。「一つ質問があるのですが、浅子の顔の怪我はどうしたのかご存知ですか?」
華さんはレストランで見たことを老人に話した。
老人は大体の経緯を理解した。
「お年寄り、あなたがここで時田浅子に付き添うなら、私は先に戻ります。」
「わかりました、さようなら。」
華さんが去った後、老人はベッドの傍らに座り、時田浅子の手を握った。
「浅子、怖がることはないよ。おじいちゃんがいるんだから!おじいちゃんは年を取っただけで、死んだわけじゃない!誰があなたに手を出そうとしても、おじいちゃんが代償を払わせるよ!」
華さんの説明から、老人は車椅子に座って時田浅子を助けた人物は、おそらく時央だろうと推測した!
時央は何が起きたか知っているのに?
なぜ浅子はまたレコーディングスタジオに行ったのか!そしてスタジオで気を失ったのか!
老人は携帯電話を取り出し、藤原時央に電話をかけた。
「時央、どこにいる?」老人は尋ねた。
藤原時央はまだ病院にいて、斉藤若春は診察を終え、薬を待っているところだった。
「何かあったのですか?」彼は逆に尋ねた。
老人は即座に激怒した。
藤原時央がまだこんなに冷静に「何かあったのですか?」と尋ねられるとは!
「すぐに清瀬通りの病院に来なさい。」
藤原時央は今、まさに清瀬通りの病院にいた。
「あなたは清瀬通りの病院で何をしているのですか?」
「浅子がレコーディングスタジオで倒れたんだ。スタジオのスタッフが119番を呼んでこの病院に運んだ!」
「時田浅子が倒れた?」藤原時央の口調には隠しきれない焦りがあった。
「浅子はまだ目を覚まさない。彼女を動かしたくないから、この病院に入院手続きをして、検査結果を待っているところだ。」老人は言い終えると、電話を切った。
藤原時央は携帯を握りしめ、表情は暗かった。
この女、何も問題ないと言っていたのに!
「時央、薬を受け取ったわ。もう行けるわよ。」斉藤若春が藤原時央の側に来た。