「今のところ秘書は必要ありません、ありがとう」時田浅子はやはり断った。
「もし時田さんが本当に必要ないのであれば、直接藤原社長にお伝えください。私は藤原社長と5年間の労働契約を結んでいますので」
「今は時間がないけど、必ず彼に伝えるわ。先に戻っていて」
「藤原社長が私との労働契約を解除するまでは、時田さんにお仕えするのが私の務めです」
時田浅子は深く息を吸った。彼女は本当に言葉に詰まった。
彼女は今撮影の任務があり、この件でこれ以上時間を無駄にするわけにはいかなかった。そして撮影現場へと向かった。
森山緑も彼女の後についていった。
時田浅子は自分のバッグを手に取り、化粧鏡と口紅を探した。
柳裕亮は突然、時田浅子に向かって歩いていく森山緑を呼び止めた。
「そこのお嬢さん、ちょっと待ってください」