「ちょうどいいわ、住所を私の携帯に送って、後で江川楓に送るわ」
「電話を切ったらすぐ送るわ」
「わかったわ、他に用事がなければ、お母さんは先に切るわね」
「うんうん」
電話を切ると、時田浅子はクローゼットに服を探しに行った。
クローゼットにはいくつかの服が置いてあり、ちょうど全て藤原時央が買ったものだった。
彼女の頭の中に突然、藤原時央の言葉が浮かんできた。
「知ってるか?私がこのドレスを選んだとき、何を考えていたか?」
「便利さだ」
時田浅子は、これから江川楓が来ることを考えると、バスタオル一枚で人に会うわけにはいかない。
手近な服を一枚取って着替え、リビングに出てすぐに全ての電気をつけた。
約1時間後、江川楓はマンションの外に到着した。
彼は車を停め、藤原時央に向かって歩いていった。「藤原若旦那、若奥様は本当にここに住んでいるんですか?」