第375章:致命な皮肉

「ちょうどいいわ、住所を私の携帯に送って、後で江川楓に送るわ」

「電話を切ったらすぐ送るわ」

「わかったわ、他に用事がなければ、お母さんは先に切るわね」

「うんうん」

電話を切ると、時田浅子はクローゼットに服を探しに行った。

クローゼットにはいくつかの服が置いてあり、ちょうど全て藤原時央が買ったものだった。

彼女の頭の中に突然、藤原時央の言葉が浮かんできた。

「知ってるか?私がこのドレスを選んだとき、何を考えていたか?」

「便利さだ」

時田浅子は、これから江川楓が来ることを考えると、バスタオル一枚で人に会うわけにはいかない。

手近な服を一枚取って着替え、リビングに出てすぐに全ての電気をつけた。

約1時間後、江川楓はマンションの外に到着した。

彼は車を停め、藤原時央に向かって歩いていった。「藤原若旦那、若奥様は本当にここに住んでいるんですか?」

藤原時央の心は詰まった。「頼んだものは買ったのか?」

「買いました。ステーキセットと、スープと、フルーツもあります」江川楓は振り返り、車から包んだ食べ物を取り出した。

藤原時央はそれを受け取り、自ら確認してから、やっと少し安心した。

10分後、江川楓と鈴木真弦は二つの大きな箱を引きずり、藤原時央は食べ物を持って、エレベーターの中に立っていた。

「エレベーター小さいな!たった3人とこれだけの荷物で満杯だ。このマンション、かなり古いんじゃないか?」江川楓は鈴木真弦を見た。

「10年以上経ってますね。環境はよくないです」鈴木真弦が答えた。

「若奥様がなぜここに住んでるんだ?老会長が知ったら、どれだけ心配するか!」

「藤原社長も心配してますよ」

「老会長が知ったら、藤原若旦那は全身痛むことになるぞ」

言い終わった後、二人はようやく気づいた。彼らが文句を言っていた藤原さまが、彼らの後ろに立っていることに!

エレベーターのドアが開き、藤原時央は手に持っていたものを江川楓に渡した。

江川楓は驚いた。「藤原若旦那、あなたも若奥様のところに届けるんですか?」

「お前が届けろ!」藤原時央は冷たく命じた。

「まったく、間違いを認めたなら、謝罪の誠意を見せるべきだ。どうしてまだプライドが邪魔をするんだ」江川楓はまた我慢できずに文句を言った。

藤原時央は直接江川楓を蹴った!