「ちょうどいいわ、住所を私の携帯に送って、後で江川楓に送るわ」
「電話を切ったらすぐ送るわ」
「わかったわ、他に用事がなければ、お母さんは先に切るわね」
「うんうん」
電話を切ると、時田浅子はクローゼットに服を探しに行った。
クローゼットにはいくつかの服が置いてあり、ちょうど全て藤原時央が買ったものだった。
彼女の頭の中に突然、藤原時央の言葉が浮かんできた。
「知ってるか?私がこのドレスを選んだとき、何を考えていたか?」
「便利さだ」
時田浅子は、これから江川楓が来ることを考えると、バスタオル一枚で人に会うわけにはいかない。
手近な服を一枚取って着替え、リビングに出てすぐに全ての電気をつけた。
約1時間後、江川楓はマンションの外に到着した。
彼は車を停め、藤原時央に向かって歩いていった。「藤原若旦那、若奥様は本当にここに住んでいるんですか?」
藤原時央の心は詰まった。「頼んだものは買ったのか?」
「買いました。ステーキセットと、スープと、フルーツもあります」江川楓は振り返り、車から包んだ食べ物を取り出した。
藤原時央はそれを受け取り、自ら確認してから、やっと少し安心した。
10分後、江川楓と鈴木真弦は二つの大きな箱を引きずり、藤原時央は食べ物を持って、エレベーターの中に立っていた。
「エレベーター小さいな!たった3人とこれだけの荷物で満杯だ。このマンション、かなり古いんじゃないか?」江川楓は鈴木真弦を見た。
「10年以上経ってますね。環境はよくないです」鈴木真弦が答えた。
「若奥様がなぜここに住んでるんだ?老会長が知ったら、どれだけ心配するか!」
「藤原社長も心配してますよ」
「老会長が知ったら、藤原若旦那は全身痛むことになるぞ」
言い終わった後、二人はようやく気づいた。彼らが文句を言っていた藤原さまが、彼らの後ろに立っていることに!
エレベーターのドアが開き、藤原時央は手に持っていたものを江川楓に渡した。
江川楓は驚いた。「藤原若旦那、あなたも若奥様のところに届けるんですか?」
「お前が届けろ!」藤原時央は冷たく命じた。
「まったく、間違いを認めたなら、謝罪の誠意を見せるべきだ。どうしてまだプライドが邪魔をするんだ」江川楓はまた我慢できずに文句を言った。
藤原時央は直接江川楓を蹴った!