斉藤若春は窓辺に立ち、下の二つの人影を見つめながら、目に一筋の恨みを浮かべた!
「斉藤さん、退院手続きをされますか?」看護師が入ってきて尋ねた。
「はい」
「もう一日様子を見てから退院されたほうがよろしいのでは?」
「結構です。すぐに退院手続きをお願いします」斉藤若春は強く言い張った。先ほどまでの弱々しい様子はどこにもなかった。
藤原時央がすでに来たのだから、彼女がここにいる意味はもうない。
SNSに投稿してから自殺未遂まで、このゲームはまだ始まったばかり。
「水滴石を穿つ」という言葉があるではないか。
彼女は信じなかった、藤原時央の心が石よりも硬いなんて!
……
時田浅子と藤原時央は藤原家の本邸に戻った。
老人は居間に座り、表情はあまり良くなかった。
「せっかくの週末に私と過ごすと思ったのに、また浅子をどこかに連れ出したのか?」
「おじいさま、少し用事があって出かけていました」時田浅子は老人の前に進み、藤原時央の代わりにこの質問に答えた。
彼女は斉藤若春のことを言及するのを避けた。老人がまた怒るのを恐れたからだ。
「用事は済んだのか?今度は私と過ごす時間だな?今は涼しくなったから、私の小さな菜園を見に行かないか?」
「はい!」時田浅子はうなずいた。
藤原時央は一緒に行かず、書斎に戻った。
書斎に入るとすぐに江川楓に電話をかけた。
「尊御クラブの駐車場の監視カメラを調べてくれ」
「かしこまりました」
藤原時央はやはり真相を明らかにしたかった。
彼は人に計算されることが嫌いだった。それが彼の底線だった。
……
時田浅子と老人は菜園に行き、たくさんの野菜を収穫した。
夕食の食卓には、老人が自給自足で育てた成果が並んでいた。
しかも時田浅子が自ら料理したものだった。
藤原時央の食欲の良さに、老人と大木嵐は驚いた。
つまり、以前の好き嫌いは全て気まぐれだったのだ!
時田浅子は老人と散歩に出かけ、戻ってきてからも老人に呼ばれて囲碁を打った。
祖父と孫は和気あいあいとしていた。
藤原時央は時計を見た。もう8時だった。
彼は時田浅子の前に歩み寄り、碁石を一つ動かした。
老人は自分の大きな陣地が封じられたのを見て、怒って藤原時央を睨みつけた。
「碁を見るなら黙って見るのが君子というものだ、わからんのか?」