第449章:浅子、君は私だけを愛せる

「時央、あなたなの?これはまだ私の幻覚かしら?」斉藤若春の声は震えていた。一言一言が、彼女が藤原時央を見た時の興奮を明確に表していた。

「なぜこんなことをしたんだ?」

「私は……私は……」斉藤若春は泣きじゃくり、まるで天にも届くほどの屈辱を受けたかのようだった。

時田浅子は斉藤若春が泣き崩れる姿を見て、少し心が痛んだ。女性である彼女でさえ斉藤若春が可哀想に思えるのだから、男性ならなおさらだろう。

彼女はその場を離れたいと思った。

斉藤若春がこんな状態で何を確かめるというのか?

確かめた結果は一つしかない:斉藤若春が藤原時央をどれほど愛しているかということだけだ。

「時央、あなたを見た瞬間、私は突然思ったの。死ぬなんてなんて愚かなことだろうって。死んでしまったら、もうあなたに会えなくなるから」斉藤若春は少しも遠慮せずに自分の気持ちを表現した。

藤原時央は時田浅子の方向を一瞥した。

時田浅子は彼と一瞬目が合ったが、すぐに視線をそらした。

この瞬間、彼女は藤原時央と一緒に来たことを後悔していた。

藤原時央は斉藤若春のこの状態を見て、写真のことを尋ねるのは適切ではないと思った。おそらく、最初から直接斉藤若春を訪ねるべきではなかったのだろう。

「ゆっくり養生して、もうこんなことはしないでくれ」藤原時央は慰めの言葉をかけた。

「時央、もう二度としないわ。あなたの言うことをちゃんと聞くわ」斉藤若春はすぐに約束した。

藤原時央はそういう意味で言ったわけではなかった。

しかし、反論する方法もなかった。

時田浅子はますます、藤原時央と斉藤若春の間が恋人同士のように思えた。

斉藤若春は藤原時央をあれほど愛していて、しかもあれほど優秀だ。どう見ても、斉藤若春の方が藤原時央に相応しい。

「用事があるから、先に行くよ」藤原時央はこれ以上留まりたくなく、別れを告げた。

「時央、もう行ってしまうの?もう少し居てくれない?たった一瞬でいいから、私一人を置いていかないで」斉藤若春は慌てて藤原時央の手を引いた。

時田浅子はこの光景を見て、外へ向かって歩き出した。

彼女は自分が余計な存在だと感じていた。

斉藤若春は出口の方向を一瞥し、驚いた表情で藤原時央を見た。「時央、今出て行った人は時田浅子?」

「そうだ」藤原時央は自分の手を引き抜き、急いで出て行った。