「だから、私と一緒に来てほしい」藤原時央は再び言った。
時田浅子が車に座った時、彼女はまだ、なぜ藤原時央と一緒に斉藤若春に会いに行くことに同意したのか理解できていなかった。
斉藤若春がしたこと全ては、藤原時央を手に入れるためだった。
彼女にはどんな立場があって藤原時央に付き添うのだろう?
事実の真相を、彼女は本当に気にしているのだろうか?
なぜ藤原時央と斉藤若春が一緒にいるのをあんなに親密に見ると、彼女の心はあんなにも不快になるのだろう?
これらの疑問が、彼女の心を少し慌てさせた。
藤原家の本邸を出てまもなく、藤原時央は斉藤若春に電話をかけた。
電話はしばらく鳴り続け、ようやく誰かが出た。
「もしもし、斉藤さんをお探しですか?」見知らぬ声が電話から聞こえてきた。
「はい」藤原時央はうなずいた。
「斉藤さんは今、薬を飲んで眠っています」
時田浅子は振り向いて藤原時央を見つめ、電話の向こうの人の話を聞いた。斉藤若春は病気なのだろうか?
「彼女はどうしたんですか?」藤原時央は尋ねた。
「斉藤さんは薬を飲んで自殺を図りました。病院に運ばれ、やっと一命を取り留めましたが、今も入院中です。彼女には親族がいないので、私は病院の介護士ですが、あなたは彼女の家族ですか?」
自殺?
時田浅子の表情が引き締まった。
斉藤若春が自殺した?
「彼女はどこの病院にいますか?」藤原時央は沈んだ声で尋ねた。
「和理病院の入院棟9階のVIP病室です」
藤原時央は電話を切り、方向を変えた。
「私たちが彼女を誤解していたのかもしれない?」時田浅子は藤原時央に尋ねた。
「まずは行って状況を見てみよう」藤原時央は時田浅子の手を握り、「行きたくなければ、先に送っていくよ」
「いいえ、一緒に行きます」
藤原時央の目に笑みが浮かび、うなずいた。「うん、一緒に行こう」
病院に着くと、藤原時央と時田浅子は前後して斉藤若春の病室に入った。
斉藤若春はベッドに横たわり、顔色は青白く、まだ目覚めていなかった。部屋にはリズミカルに鳴る機械の音だけが響いていた。
時田浅子は病院によく行くので、この光景を見て少し悲しい気持ちになった。
斉藤若春は本当に藤原時央を愛しすぎて、自分の命さえも惜しまないほどなのだろうか?