「緑ねえさん!」時田浅子が声をかけた。
森山緑はすぐに時田浅子の方向に歩み寄った。
「私の予約は11時半だから、そろそろ時間ね。先に入りましょう。話しておきたいことがまだいくつかあるの。」
「はい。」時田浅子はうなずき、森山緑の後に続いた。
11時半になったが、長谷監督の姿はまだ見えなかった。
森山緑はさらに10分ほど我慢して待ったが、耐えきれずに長谷監督に電話をかけた。
「森山さん、本当に申し訳ありません。こちらで急な会食が入ってしまって、どうしても抜け出せないんです。こうしましょう、食事は遠慮しますので、こちらが終わったらすぐに向かいますが、よろしいでしょうか?」
「わかりました。では、ここで長谷監督をお待ちしています。」森山緑は電話を切った。
「どうだった?来ないの?」時田浅子はすぐに尋ねた。
「別の場所で食事をしているわ。食事が終わったら来るって。私たちはここで食べながら待ちましょう。」
「わかった。」
長谷監督が向かったのは金恵との約束だった。
今、彼らはすでに食事中だった。
「長谷監督、乾杯しましょう。」金恵はグラスを持って長谷監督に近づいた。
長谷監督は彼女を上から下まで見て、「今日の金田さんは特に美しいですね。」と言った。
「そうですか?長谷監督にお会いするために特別にお化粧したんですよ。」金恵は巻き髪を指で弄びながら、魅力的な仕草を見せた。
長谷監督は彼女の手からグラスを受け取った。
金恵はわざと長谷監督の手に触れ、身体的な接触を作り出した。
長谷監督の心は少し揺らいだが、次の瞬間、彼は我に返った。なぜなら、彼の脳裏に、あの日金恵がクレンジング剤を顔に浴びせられた姿が勝手に浮かんできたからだ。
金恵がどれほど熱心に振る舞っても、彼はこれ以上進むことができなかった。
彼は朝目覚めたとき、「画皮」のような恐怖を体験することを恐れていた。
佐木晴樹と金恵が長谷監督を誘ったのは、第一回の番組放送後に予想以上に人気が出て、今後もっと多くの画面に映りたいと思ったからだった。
「長谷監督、さっきの電話は森山緑からですよね?」佐木晴樹は探るように尋ねた。
「そうです。森山緑が契約解除を求めてきたんです。彼女はまだ寺田家の後ろ盾があると思っているようですね。」