藤原時央はしばらく待ったが、鈴木真弦がまだ入ってこないので、立ち上がって外に向かった。すると、鈴木真弦がコピー機の前でスマホをいじっているのが見えた。
彼は眉をひそめ、歩み寄った。
スマホから時田浅子の声が聞こえてきた。
「社長!」鈴木真弦も藤原時央に気づき、すぐに声をかけた。
「何を見ているんだ?」
「ライブ配信です!奥様の配信です。」
藤原時央が手を伸ばすと、鈴木真弦はすぐにスマホを渡した。
確かに時田浅子だった。
彼は時田浅子がライブ配信をすることを知らなかった。
鈴木真弦は明らかに社長の表情が険しくなったのを感じ、急いで資料をまとめて脇に立った。
藤原時央はしばらく見てからスマホの電源を切り、オフィスに戻った。
鈴木真弦はすぐに後に続き、資料を藤原時央の前に置いた。
藤原時央は資料を見もせず、スマホを開いた。
突然、そのショート動画アプリを持っていないことに気づき、ダウンロードした。そして開くと、すぐに時田浅子の配信が表示された。
「このショート動画プラットフォームは白沢陸のものじゃないか?」
「はい、社長。白沢三様は最初は遊びでやっていたんですが、思いがけず一気に人気が出ました!今では9億人以上のユーザーがいます!」鈴木真弦は急いで答えた。
藤原時央は画面いっぱいの花やギフトを見ながら、ページを開く方法を探った。
花のアイコンをタップすると、アカウントのコインが不足しているという通知が表示された。
「社長、ギフトを送るには先にチャージが必要です。」鈴木真弦はすぐに説明した。
藤原時央はギフト欄を見て、99999本のバラを確認した。
「社長、この99999本のバラは特別なロマンチックなエフェクトを起動させます。配信ルームでは1分間、花びらの雨が降ります。」
「派手すぎる。」藤原時央はそう言って、スマホを裏返しに机に置いた。「資料はそこに置いて、出ていいぞ。」
「はい。」鈴木真弦はすぐに退出した。
時田浅子は視聴者がこんなに熱心だとは思わず、何度もお礼を言った。
「みなさん、ギフトをありがとうございます。今日の配信は、ファンの皆さんへの感謝の気持ちを伝えるためです。応援してくださって本当にありがとうございます。」
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