「そうですね、今回の協力が実現したのは、斉藤社長が本当に多くの心血を注いだからです。きっと藤原社長との関係があるからこそ、こんなに熱心になれたのでしょう」斉藤若春の隣にいる、スーツを着た秘書のような人物が突然口を開いた。
確かに、宮本凪の力だけでは、この件を進めることはできなかっただろう。
藤原時央は手元の資料を閉じた。
「私の知る限り、以前は我が国と貴国の間で医療面での協力はそれほど多くなかったはずです。薬物を導入した後、我が国では大きな需要が生まれ、最大の利益を得るのはむしろ貴方たちのはずです」藤原時央は公務的な口調で言った。
斉藤若春は藤原時央の方向を見つめ、「時央、今回の薬物導入は単なる公務ではないわ。私は完全に私心から、この薬が京都病院に十分に供給されることだけを望んでいるの。そうすれば、浅子のお母さんは薬の問題に悩まされることがなくなるわ」
この言葉は、とても誠実に聞こえた。
時田浅子は斉藤若春にだまされた経験がなければ、斉藤若春が完全に自分のためを思っていると信じてしまうところだった。
「藤原時央、君は一晩で京都病院の株を買い占め、この件に介入したのに、目に映るのは利益だけなのか?君がまず考えるべきは浅子のことじゃないのか?」宮本凪は藤原時央に詰め寄った。
時田浅子は手を上げて藤原時央の手首を握った。藤原時央は彼女の手の甲を軽く数回叩き、無言で彼女を慰めた。
彼は知っていた、彼女の心が焦っていることを。
「この契約書を見ましたが、薬物の導入になぜこのような付帯条件があるのですか?臨床研究作業グループの設立?斉藤社長、説明していただけますか?」藤原時央は斉藤若春に尋ねた。
「これは付帯条件なの。もしこの条件を受け入れなければ、薬を導入することができないわ。時央、私は本当に精一杯努力したわ。時田浅子が私に対して深い誤解を持っていることも知っているし、あなたの心に私がいないことも分かっている。ただ、私があなたが思うような人間ではないということを誤解してほしくないだけなの」斉藤若春は可哀想そうに言った。
「それに、あなたに知ってほしいの。あなたのためなら、私にできることなら何でもするわ。たとえ私の命を捧げることになっても惜しまない」