彼女はまだ、白川健斗が藤原時央に委託されて状況を把握するためだけに来たのだと思っていた。
まさか、本当に京都の株式の大権を握る人物が藤原時央だとは!
藤原時央はずっと医療分野に手を出す考えがなかったのではないか?
なぜ彼は京都病院の経営権も自分の手中に収めようとするのか?
もしかして、時田浅子のためなのか?
斉藤若春の心の中で怒りが湧き上がったが、彼女はその怒りを必死に抑え込み、少しも表に出さないようにしなければならなかった。
本来、彼女がこのことをしたのも、藤原時央に見せるためだったのだ。
時田浅子が斉藤若春を見たとき、彼女も驚きの表情を浮かべた。
最も彼女を驚かせたのは、宮本凪が斉藤若春と一緒に座っていたことだった。
もしかして、宮本凪が資金の問題を考える必要がなくなったと言ったのは、斉藤若春の援助があったからなのか?
斉藤若春はいったい何の目的で?
藤原時央は今日斉藤若春が来ることを知っていたのだろうか?
時田浅子は今に至るまで、頭が混乱したままだった。
宮本凪の視線は、時田浅子と藤原時央が入ってきた瞬間から、ずっと時田浅子に注がれていた。特に藤原時央がしっかりと時田浅子の手を握っているのを見たとき。
彼も思わず両手を強く握りしめた。
彼は一晩かけて、浅子の状態がストレス反応であることを突き止めた。
彼には理解できなかった。なぜ浅子は彼に対してあれほど強いストレス反応を示すのに、藤原時央に対してはそのような反応を示さないのか!
彼女は心の奥底から彼をそれほど拒絶しているのか?
会議室の人々は雰囲気が少しおかしいと感じたが、その理由がわからなかった。
その秘密を知っているのは白川健斗だけで、彼は笑みを浮かべて黙っていた。
この四角関係は本当に複雑で興味深い。
「時央、時田浅子、なんて偶然でしょう。ここであなたたちに会えるとは思わなかったわ」斉藤若春は笑顔で挨拶した。
時田浅子は藤原時央を見た。
藤原時央は斉藤若春に応じることなく、椅子を引いて時田浅子を座らせた。この小さな動作は非常に紳士的で思いやりがあった。
時田浅子は事情がはっきりするまで、静かに様子を見ていた。