時田浅子は藤原時央がそこに立ち尽くしているのを見て、仕方なく白沢陸をリビングに招き入れた。
「浅子、何か飲み物ある?できれば冷たいものがいいな」白沢陸は遠慮なく尋ねた。
「あるわ、すぐ持ってくるね」時田浅子はキッチンへ向かった。
藤原時央も歩み寄り、ソファに座った。
白沢陸はすぐに彼に近づいた。「藤原若旦那、浅子というこの家の主人が、あなたのところでは私という客人よりも他人行儀に感じるのはなぜ?」
藤原時央:……
白沢陸は藤原時央の表情を見て、内心で喜んでいた!
もし藤原時央が愛情表現をするときに少しでも控えめにしていれば、彼への傷つけが少しでも軽減されていたなら、彼はこの時、人の不幸を喜ぶようなことはしなかっただろう。
時田浅子はソーダ水を2本持って出てきて、藤原時央と白沢陸の前にそれぞれ1本ずつ置いた。
「ありがとう」白沢陸は静かに礼を言った。
「どういたしまして。先に座っていて、私は荷物を置いてくるわ」
時田浅子はまだいくつかのアクセサリーを身につけていて、外さないと少し不快だったので、一言断ってから寝室へ向かった。
白沢陸はすぐに藤原時央の方へ寄り、ニヤニヤした顔で彼を見つめた。
「藤原若旦那、さっきの表情、あまり嬉しそうじゃなかったね?恋愛でまた挫折したの?恋愛というものはね、強い酒のようなもので、頭に来るけど、心臓も焼けるんだよ!何かあったら、私に相談してよ、心の中に溜め込まないで!」
「あのビデオを削除する気になったか?」藤原時央は冷たく尋ねた。
「それは無理だよ!」白沢陸は激しく首を振った。
「誤解しているな。お前が来たのがタイミング悪かっただけだ。品物は届いたし、もう帰っていいぞ」
白沢陸:……
彼は理解を間違えたのだろうか?藤原時央が憂いに満ちた表情をしていると確かに感じたのに。
「藤原若旦那、あなたは明らかに機嫌が悪いと思うよ」
「強制的に邪魔されて機嫌が良いわけないだろう?まあ、お前はそんな経験はないだろうな。結局、生まれてこのかた独身だからな」
白沢陸:人を殺し心を断つとはこのことだ!
突然、外からドアベルの音が鳴った。
時田浅子はちょうど部屋から出てきて、ドアを開けに行った。
「こんにちは、藤原奥様。先ほどご購入いただいた品をお届けに参りました。ご署名をお願いします」