「この研究は現在何の突破口も得られていません。研究を続けるかどうかも不明です。この研究と藤原時央と時田浅子が一緒にいることとどんな関係があるのですか?」宮本凪はどうしてもこの件が理解できなかった。
「適切な時が来たら、本当の状況を教えるわ」斉藤若春はまだ謎めかしていた。彼女はこうして宮本凪を引っ張っておきたかったのだ。
適切なタイミングが来たら行動に出る。
今は、林清子という爆弾があるので、時田浅子を排除できるかもしれない。一石二鳥だ!
宮本凪はまだ諦めきれなかったが、どこから突破口を見つけようとしても、斉藤若春はもう一言も漏らさなかった。
「宮本凪、今あなたに教えないのは、時田浅子のためでもあるの」斉藤若春は宮本凪のしつこさに耐えられず、時田浅子を持ち出した。
宮本凪は時田浅子の名前を聞くと、すぐに追及するのをやめた。
時田浅子と藤原時央は店員の案内で、斉藤若春と宮本凪の個室へと向かった。
ドアが開くと、宮本凪と斉藤若春は同時に入口の方を見た。
藤原時央は時田浅子の手を取って入ってきた。
「浅子、時央、こんなに早く来たの?」斉藤若春はすぐに親しげに挨拶した。
「ここから近かったから」時田浅子は淡々と答えた。
以前は、時田浅子は斉藤若春のことを考えるだけで歯ぎしりするほど憎んでいたが、決定的な証拠がなく、斉藤若春に何もできなかった。斉藤若春の偽善に対して、彼女も自分の感情を隠すことを学んだのだ。
「まだ少し時間がかかると思ってたわ。さあ、座って」斉藤若春は笑顔で応じた。
その言葉を言う間、彼女は常に藤原時央を見ていた。明らかに、彼女が引いた椅子も、特に藤原時央のために用意したものだった。
時田浅子は藤原時央を一瞥した。藤原時央の表情は硬く、何の感情も読み取れなかった。
藤原時央は奥の席に行き、椅子を引いて時田浅子に座るよう促した。最初から最後まで、斉藤若春を一度も見なかった。
時田浅子がその席に座ると、斉藤若春は仕方なく自分が引いた席に座った。
部屋の雰囲気は言い表せないほど気まずいものだった。
時田浅子はこのような会食に来たことを少し後悔していた。彼女の厚顔無恥さは本当に斉藤若春の十分の一もなかった。
しかし藤原時央は何事もないかのようだった。