「ここのデザートはなかなか良いわよ。前に食べたことがあるから、いくつか試してみたら?」斉藤若春は見栄を張って数個選んだ。
「これらは甘すぎず、食感も良いわ。特にこのムースケーキは、口に入れるとすぐ溶けるの」
「浅子もこういうのが好きだと思う」宮本凪は二つ注文した。
「時央は甘いものが大嫌いなのよ。彼は食べ物にとても厳しくて、体に必要な栄養を薬で補うほどなの」斉藤若春はさも何気なく口にした。
宮本凪の視線はメニューから斉藤若春の顔に移った。
斉藤若春は少し居心地悪そうに、体を後ろにずらし、テーブルの上のグラスを取って一口水を飲んだ。
「斉藤社長、あなたと藤原時央は以前いったいどういう関係だったのか教えてくれませんか?あなたたちの間には、単にあなたが彼に恋心を抱いていて、彼があなたに無関心だったという片思い以上のものがあるように感じるんです」宮本凪はメニューを置き、真剣な表情で斉藤若春を見つめた。