二人の間には言葉にできない微妙な雰囲気が漂っていた。
時田浅子は自分の顔が熱くなり、耳は血が滴り落ちるほど赤くなっていると感じた。
「藤原時央、ここは外よ!」時田浅子は二人だけに聞こえる声で叱った。
藤原時央は収まるどころか、さらに彼女に近づき、唇が彼女の耳に触れた。
磁性のある声と熱い息が、同時に彼女の耳の奥深くまで入り込んだ。
「外だからどうしたの?」
時田浅子は彼の腰をぎゅっと掴んだ。彼女は力を入れたが、藤原時央はびくともしなかった。
二人の行動は斉藤若春と宮本凪から見ると、まるで甘い恋愛中のカップルが耳元で戯れているようだった。
斉藤若春は怒りで手にしたグラスを握りしめ、彼女の震えでグラスの中の水がガラスの壁に当たって揺れていた。
宮本凪に至っては、視線を別の方向に向けた。