藤原時央の目には笑みが満ちていた。彼は振り向いて、時田浅子を抱きしめ、彼女の額にキスをした。
「トマトの匂いがするような気がする」時田浅子は首を傾げて鍋の中を覗き込んだ。
鍋の中では濃厚なトマトスープが煮えていた。
トマトスープはお母さんの得意料理でもあるのに、藤原時央もどうして作れるの?
まさか…
時田浅子がようやく気づいた時、藤原時央はある方向に向かって尋ねた。「お母さん、これくらい煮込めばいいですか?」
お母さん…
やっぱり!
時田浅子は振り向く勇気がなく、恥ずかしさで足の指を床に食い込ませた。
「そろそろいいわよ、火を止めて、二人で早く食べなさい。食べ終わったら本題に入って、私は病院で待ってるから」言い終わると、時田秋染はビデオ通話を切った。
藤原時央は困惑している時田浅子を見下ろし、彼女を抱きしめて、愛情を込めて彼女の頭を撫でた。
「さあ、顔を洗ってきて、朝食の準備ができたよ」
「あなたは今、私のお母さんとビデオ通話してたのに、どうして教えてくれなかったの?」時田浅子は顔を上げ、頬を赤らめながら言った後、落ち着かない様子で服の裾を引っ張った。
「見て、私の格好」
「その格好、僕は好きだよ」
時田浅子は急いで彼の手を払いのけた。「顔を洗ってくる」
藤原時央は彼女が逃げるように去っていく後ろ姿を見て、思わず口元が緩んだ。
時田浅子が再び現れた時、彼女は綿100%のルームウェアを着ていた。半袖に長ズボンで、しっかりと体を包み込んでいた。
藤原時央は彼女のその格好を見て、眉をしかめた。
テーブルの上にはすでに朝食が並べられていた。
時田浅子が大好きなトマトスープには、エビ、キノコ、鶏肉のダイスが入っていて、他にはパン数枚と目玉焼き、ベーコンがあり、とても豪華だった。
藤原時央はスープを一杯よそって時田浅子の前に置いた。「味はどうかな?」
このスープは時田お母さんが作るものと全く違いがなかった。
重要なのは、これが藤原時央が初めて作ったものだということだ。
時田浅子は自分でもこんな出来栄えになるとは保証できなかった。
彼女は一口飲んで、すぐに頷いた。酸味の中に甘みがあり、食欲をそそる味だった!
「美味しい!」
藤原時央はほっとして、自分も一口飲んだ。
味は確かに良かった!