第649章:慌てふためいて彼に恋をした

お爺さんは団子に五目並べを教えていて、藤原時央が時田浅子を抱えて階段を上がるのを見て、目に笑みを浮かべていた。

藤原時央は時田浅子を部屋に連れて戻ったが、彼女を手放す気にはなれなかった。

窓際のソファに座り、時田浅子をずっと彼の腕の中に抱きしめていた。

時田浅子の感情はすでに落ち着いていて、もう泣いてはいなかったが、さっきまであまりにも悲しく泣いていたため、まだすすり泣きが止まらなかった。

藤原時央の視線は彼女から離れなかった。

まつ毛がまだ濡れていて、目は赤く、鼻先まで赤くなっているのに気づいた。

この姿は、人の心を痛ませるものだった。

「どうしてずっと私を見つめているの?」時田浅子は少し恥ずかしそうに言った。

「綺麗だから」藤原時央は笑いながら答えた。

時田浅子はすぐに手を伸ばして彼の目を覆った。「泣いている時に綺麗な人なんていないわ」

「君は綺麗だよ、いつだって綺麗だ」藤原時央は彼女の手を取り、両手で彼女の体を抱きしめた。

時田浅子は彼の力に従って彼の胸に寄りかかり、顔に湿り気を感じた。

「あなたの服が濡れてる」

「君に泣かれて濡れた服は何枚目だと思う?」

「わからない」時田浅子は首を振った。「服を着替えた方がいいんじゃない?」

「いらない」藤原時央は首を振った。「今は少し楽になった?」

「ずっとマシよ」時田浅子は突然あることに気づいた。

毎回、彼女が泣くとき、藤原時央は「泣かないで」というような言葉を一度も言わず、むしろ彼女に泣かせて感情を発散させるようにしていた。この感覚は、彼女をとても安心させた。

実際、彼女は泣き虫な性格ではなかった。

藤原時央の前では、まるで泣き虫のように見えるかもしれないが。

「私、実はそんなに泣き虫じゃないの」時田浅子は小声で説明した。

「そんなに泣き虫じゃない?」藤原時央は笑いながら問い返した。

「本当よ、前はほとんど泣かなかった」

「じゃあ、僕の前だけで泣き虫になるんだ?」

時田浅子はうなずいたが、この質問がどこか変だと感じて、すぐに首を振った。

彼女のその矛盾した様子は、藤原時央の目には言うまでもなく可愛らしく映った。