陣内美念はもう笑いが止まらなかったが、それでも親切にも渡辺能野にビデオの中の人物が島田香織だとは教えなかった。
「渡辺さん」陣内美念は一歩前に出て、真面目な表情を装おうとしたが、顔が笑いで引きつってしまった。「ビデオの中の人を見つけてから、また話しましょう!」
そう言って、陣内美念は島田香織の手を引いて駐車場へ向かった。
少し離れたところで、彼女は振り返って渡辺能野を見て、島田香織に笑いながら尋ねた。「情報を封鎖させたの?」
「うん」島田香織は本来情報封鎖にお金を使いたくなかったが、悪意のある人が暴力を煽り、噂が広がることで、後々面倒なことになるのを恐れていた。
「実は情報を封鎖すべきじゃなかったわ。渡辺能野が、自分が言っていた小さな妖精が実はあなただと知ったときの反応が見たかったわ」陣内美念は涙が出るほど笑った。
陣内美念のその言葉を聞いて、島田香織は興味深そうに彼女を見て、尋ねた。「あなたと田村警部はどうなの?」
陣内美念の笑顔が一瞬止まり、その後寂しそうに笑って言った。「もう一週間も連絡が取れないの。どこに行ったのかも分からないわ」
「きっと任務に行ってるのよ」島田香織は陣内美念が田村警部のことを気にかけているのを知っていて、笑いながら説明した。「心配しないで、彼は大丈夫よ」
陣内美念は島田香織と藤原航が同じ部屋に閉じ込められたことを思い出し、ずる賢く笑って尋ねた。「あなたと藤原航は一体どうなってるの?なぜ同じ部屋にいたの?」
「誰がやったのか分からないわ」島田香織は軽く首を振った。彼女は以前、鈴村家の二階には監視カメラがないことを確認していたので、おそらく彼女を閉じ込めた人を見つけることはできないだろう。
島田香織は軽く目を伏せた。もし彼女の見間違いでなければ、あの時藤原航はまた薬を盛られていた。
島田香織が不思議に思ったのは、一体誰が藤原航に薬を盛ろうとしたのかということだった。
島田香織と陣内美念が車に着く前に、後ろからハイヒールが地面を急いで踏む音が聞こえてきた。
「待ちなさい!」藤原昭子が急いで走ってきて、険しい表情で島田香織を見つめ、高慢な態度で近づいてきた。
横にいた陣内美念は呆れた様子で尋ねた。「藤原さん、また何をするつもり?」