032 清算

陣内美念はもう笑いが止まらなかったが、それでも親切にも渡辺能野にビデオの中の人物が島田香織だとは教えなかった。

「渡辺さん」陣内美念は一歩前に出て、真面目な表情を装おうとしたが、顔が笑いで引きつってしまった。「ビデオの中の人を見つけてから、また話しましょう!」

そう言って、陣内美念は島田香織の手を引いて駐車場へ向かった。

少し離れたところで、彼女は振り返って渡辺能野を見て、島田香織に笑いながら尋ねた。「情報を封鎖させたの?」

「うん」島田香織は本来情報封鎖にお金を使いたくなかったが、悪意のある人が暴力を煽り、噂が広がることで、後々面倒なことになるのを恐れていた。

「実は情報を封鎖すべきじゃなかったわ。渡辺能野が、自分が言っていた小さな妖精が実はあなただと知ったときの反応が見たかったわ」陣内美念は涙が出るほど笑った。