「誰も利用されるのは好きじゃない」島田香織は藤原航のしたことを思い出し、顔の笑みが薄れた。
「藤原社長のこと?」
島田香織は目を上げて陸田健児を見つめ、困惑して瞬きをした。「読心術ができるの?」
陸田健児は軽く笑いながら首を振った。
「やっぱりワインが美味しいわ」島田香織は笑いながらワイングラスを揺らし、一気に飲み干した。
彼女が酒を飲む時、頭を上げると長く白い首筋が露わになり、陸田健児は少し見とれてしまったが、すぐに我に返り、静かに目を伏せた。
島田香織は以前、藤原航に気に入られようと一生懸命努力していた時のことを思い出した。長く付き合えば愛情が芽生えると思い込み、藤原航はきっと自分のことを好きになってくれると信じていた。
でも藤原航の心の中には林桃子しかいないと知った時、彼女は自分が藤原航の目には単なる馬鹿でしかなかったことを悟った。もし最初から藤原航が林桃子をそれほど愛していることを知っていたら、きっと身を引いていただろう。