086 悪事を働く

藤原航は林桃子と島田香織が接触することを望んでいなかった。林桃子がそう尋ねるのを聞いて、少し躊躇してから「帰ろう」と言った。

林桃子は藤原航について外に向かった。彼女は5年間眠っていただけで、5年間頭がおかしくなっていたわけではない。島田香織の言葉から、お姉さんも航兄さんのことを好きになったことを明確に理解した。

藤原航が林桃子を連れて外に出ると、記者たちが一斉に取り囲んできた。

「藤原社長、この女性は昔のお相手ですか?」

「藤原社長、なぜ当時この女性と結婚しなかったのですか?」

「藤原社長、以前は藤原家の長男の奥様と親密な関係だったと聞きましたが、もう藤原家の長男の奥様とは関係を持たないおつもりですか?」

……

林桃子は思わず身震いした。藤原航と島田香織が結婚していたことに心を痛めているのではなく、最愛の姉がまさか……

藤原航は林楠見に道を開けさせ、自分は林桃子を連れて先に立ち去った。

最後まで、彼は林杏に一瞥すら与えなかった。

林桃子は藤原航の傍らについて歩きながら、振り返って林杏を見た。涙が意志に反して流れ落ちた。

藤原航は林桃子が怯えたと思い、記者たちの方を振り返って威嚇するように言った。「写真は掲載禁止だ。さもなければ、お前たちの会社は倒産を覚悟しろ!」

記者たちは藤原航の言葉に驚いて固まり、何も言えずに黙って後ずさりした。

藤原グループには逆らえないのだ。

島田香織は部屋の床から天井までの窓の前に座り、外の煌めく灯りを眺めながら、ゆっくりとワインを味わっていた。

陸田健児は島田香織の傍らに寄り、低い声で慰めた。「まだ辛いの?」

島田香織は目を上げて陸田健児を見つめ、軽く笑って首を振り、「もうずっと前から大丈夫よ」と言った。

島田香織は藤原航が「責任を取る」と言った時の眼差しを思い出した。よそよそしさの中に少しの未練が?

きっと見間違いだったに違いない。藤原航が彼女に未練を持つはずがない。

彼女と藤原航は3年間結婚していたが、藤原家では、彼女が誰かと揉め事を起こすたびに、藤原航は必ず彼女に先に謝らせた。

突然、島田香織の目に見覚えのない光景が浮かんだ。その中の一つの場面が徐々にはっきりしてきた。

暗い部屋で、藤原航がベッドの端に座り、丁寧に彼女の布団の端を押し込み、身を屈めて彼女の額にキスをした。