087 彼の不運を見る

島田香織は手にある軍用ナイフを見つめていた。中学生の時にも同じようなことをしたことがあったが、その後、家族に叱られ教育されて、それ以来二度とやらなかった。

タイヤを刺すのは良くないことだし、幼稚な行為だけど、本当にスッキリする。

島田香織は反対側の前輪に思い切りナイフを突き刺した。まるで藤原家のあの偽善者たちを刺すかのように。思わずもう一度刺してしまった。

この時、島田香織はまるで中学生の頃に戻ったかのようだった。全てを終えると、胸の高鳴りを抑えながら陸田健児と共に車に戻った。

助手席に座った島田香織はバックミラーに映る藤原航の車が小さくなっていくのを見ながら、思わず口角が上がった。

ざまあみろ!

これからは藤原航の全ての車のタイヤを刺してやる!

藤原航は林家を出て車に乗り込んだ後、頭の中は島田香織の冷たい表情でいっぱいだった。