088 恨みを持つ!

藤原航はだんだん遠ざかっていく車を見つめ、目の中の冷たさが一瞬で消え、残ったのは切なさだけだった。

彼は再びスマホのロックを解除すると、画面には島田香織の明るい笑顔が映し出され、軽くスクロールすると、以前彼女が用意した誕生日の祝福が現れた。

「私の旦那さんが成功しますように!」

スマホから島田香織の甘い声が流れてきた。

藤原航の目の中の寂しさが少し薄れ、唇の端がかすかに上がり、スマホの中の他の写真や動画を見始めた。

彼のスマホのアルバムと動画の中には、島田香織しかいなかった。

結婚して一緒にいた時、島田香織は頻繁に写真や動画を送ってきていた。彼はめったに返信しなかったが、すべての写真と動画をスマホに保存していた。

林楠見が慌てて車を運転してきた時、ちょうど藤原社長が車の横でスマホを見ているところで、藤原社長の唇は一文字に結ばれていた。

林楠見は不味いと思い、藤原社長がきっと怒っているのだろうと考え、急いで車を路肩に停めた。

「社長、レッカー会社があと30分で到着します。先に私がお送りしましょうか?」林楠見は慎重に尋ねた。

「車のキーを渡せ」藤原航は冷たく言った。

林楠見は急いで手にしていた車のキーを社長に渡すと、社長が彼の車で去っていくのを見送った。

林楠見はその場に立ち尽くし、なぜ社長が怒っているのかわからなかった。ずっと昏睡状態だった初恋の人が目覚めたのは、良いことではないのだろうか?

まあ、社長の心中を推し量るのは止めておこう。

……

前方は赤信号で、陸田健児は車を停めた。

島田香織は今も藤原航が困っていた様子を思い出し、思わず口元が緩んだ。横を向いて陸田健児を見た。

彼女の印象では、陸田健児はいつも温厚な紳士だったが、まさか彼がこんな一面を持っているとは思いもよらなかった。

藤原航が路肩で困っていた様子を見て、島田香織はまだ興奮状態にあった。

「私って恨みを持つタイプだと思う?」

「そうだね」陸田健児は笑うと、魅力的な目が輝き、続けて言った。「でも、それがかわいい」

恨みを持つことと可愛いことに何の関係があるの?

島田香織は不思議そうに陸田健児を見た。

「女の子はそういうところが可愛いんだよ」陸田健児は軽く笑いながら島田香織を見つめ、長い指でハンドルを握りしめ、内なる緊張を隠した。