115 昔の恋人?

島田香織はスプーンを置き、陸田健児に向かって笑いながら言った。「すみません、ちょっと電話に出ます。」

「もしもし!」

「香織、風邪は良くなった?」

陣内美念の声には少し探り入れるような調子が含まれていた。

島田香織はすぐに陣内美念が何か用があることを察した。「もう大丈夫よ。用があるなら早く言って、じゃないと切るわよ!」

「ねぇ、香織、オールナイトに来てよ!」

「オールナイト?私、病気が治ったばかりなのに、バーに行けって?」島田香織は呆れた様子で言った。「まだ昼間よ、バーが営業してるの?」

「お客さんは少ないわ、今日は貸切にしたの。」

「また賭けに負けたの?」島田香織はこう言いながら、少し困ったように笑った。陣内美念は普段から賭け事が好きだが、運が悪く、時には下着しか残らないほど負けることもあった。

「早く来てよ、助けを待ってるわ!」

陣内美念はそう言うと、すぐに電話を切った。

島田香織は切れた電話を見つめ、食事を終えてから陸田健児を見上げ、申し訳なさそうに言った。「ごめんなさい、オールナイトに行かなきゃならなくなっちゃった。」

島田香織はテーブルの上の料理を見た。今度は陣内美念をここに連れてきて、支払いをさせようと思った。

「いいよ、送っていくよ。」

島田香織は驚いて、少し心配そうに尋ねた。「お仕事は?」

「この数日は仕事がないんだ。」陸田健児は笑いながら説明し、島田香織と一緒に外へ向かった。

オールナイトバーに着くと、島田香織は陣内美念がボックス席で手を振っているのを見つけた。

「香織、ここここ!」陣内美念は島田香織と陸田健児が来るのを見て、島田香織に目配せをし、耳元で小声で尋ねた。「どうして陸田健児があなたと一緒に来たの?」

「一緒にランチを食べてて、送ってくれただけよ。」島田香織は正直に答えた。

島田香織の言葉を聞いて、陣内美念は意地悪そうに笑い出した。彼女は陸田健児に向かって意地悪な笑みを浮かべ、「陸田スター、バーに来て写真を撮られる心配はないんですか?」

「心配ない。」陸田健児はそう言いながら島田香織を見た。

横に座っていた富田悠太はにこにこしながら言った。「なんだか陸田スターは島田香織さんとの写真を撮られることを待ち望んでいるように見えますけどね。」