島田香織が夜に家に帰ってきたとき、陣内美念が向かいの部屋から出てきて、にこにこと島田香織を見つめていた。
島田香織は彼女の表情を見て、陣内美念が結果を突き止めたことを悟った。
彼女は玄関でスリッパに履き替え、だるそうにリビングへ向かいながら、さりげなく尋ねた。「何か分かったの?」
陣内美念も靴を履き替えて後について入ってきた。彼女は島田香織の家を自分の家のように使い慣れていて、これ以上ないほど馴染んでいた。ソファーにお尻を下ろすと、口を開いた。「重大な発見があったの」
島田香織は興味深そうに陣内美念を見つめ、ソファーに座って自分の分の水を注いだ。
「富田悠太の妹さんがあなたの漫画のファンで、ずっとサインが欲しがってたの。今朝、藤原航が彼の店に額装しに行ったとき、その絵を見てヤンがあなただと気づいて、だから昼に確かめようとしたのよ」
「どんな絵?」島田香織は少し考え込んで、躊躇いながら尋ねた。
「彼が額装しようとしてた絵は、あなたの漫画と同じ画風だったの」
陣内美念は島田香織が思い当たらないのを知っていて、笑いながら言った。「藤原航が額装しようとしてたのは水彩画で、絵の中身は彼自身よ」
水彩画?
島田香織の脳裏に、藤原航のために描いた肖像画が突然浮かんだ。でもすぐにその考えを否定した。その絵は藤原家を出るときに持ち出さなかったから、他の持ち物と一緒に藤原家の人にゴミとして捨てられただろう。
「私が描いたものじゃないと思う。誰が描いたのか分からないけど、私の画風にそっくりなのね」島田香織はどこか違和感を覚えたが、それが何なのか説明できなかった。
「そうそう、その絵の写真があるの」陣内美念は島田香織に向かって眉を上げ、スマートフォンを取り出して彼女の前に差し出し、得意げに言った。
島田香織は近寄って見た途端、顔が真っ暗になった。「これは私が藤原航のために描いたものよ」
陣内美念は完全に呆気にとられ、絵をじっと見つめながら言った。「こ、これがあなたの作品なの?」
陣内美念は島田香織が時々絵を描くことは知っていたが、こんなに上手いとは思っていなかった。すぐに目を輝かせて島田香織を見つめ、「あなた、どうして藤原の奴をこんなにかっこよく描けたの?私だったら絶対ブサイクに描いてやるのに!」